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時のかけら   



旅の空の下で
太陽に酔う
木々は光を浴びて
波うつ土地
軽いめまい
妖女のように
通り過ぎる女たち

四月の魚
釣り上げては
花を喰べる
優しい去勢のために
美酒すこし

森に降る雨
ふくろうの叫び
柔らかい土をふんで、
神の子どもたちはみな踊る

夢のかげを求めて
過ぎてゆく歌
別れた友
はぐれた子供
思い出すままに

空の果てまで
すこぶる愉快な絶望
動物化する世界の中で
やわらかく、壊れる
時のかけらたち




付記)全行が書名からなる作品の試みです。

森有正『旅の空の下で』(筑摩書房)
清岡卓行『太陽に酔う』(講談社)
森有正『木々は光を浴びて』(筑摩書房)
富岡多恵子『波うつ土地』(講談社)
金井美恵子『軽いめまい』(講談社)
倉橋由美子『妖女のように』(新潮文庫)
清岡卓行『通り過ぎる女たち』(思潮社)
正岡豊『四月の魚』(まろうど社)
アーサー・ビナード『釣り上げては』(思潮社)
吉原幸子『花を喰べる』(思潮社)
松浦理英子『優しい去勢のために』(筑摩書房)
中桐文子『美酒すこし』(筑摩書房)
関川夏央『森に降る雨』(双葉社)
パトリシア・ハイスミス『ふくろうの叫び』(河出文庫)
金井美恵子『柔らかい土をふんで、』(河出書房新社)
村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』(新潮社)
島尾敏雄『夢のかげを求めて』(河出書房新社)
齊藤史『過ぎてゆく歌』(河出書房新社)
飯島耕一『別れた友』(中央公論社)
村野美優『はぐれた子供』(花神社)
正宗白鳥『思い出すままに』(中公文庫)
高橋たか子『空の果てまで』(新潮文庫)
鮎川信夫『すこぶる愉快な絶望』(思潮社)
東浩紀・笠井潔『動物化する世界の中で』(集英社新書)
佐々木幹郎『やわらかく、壊れる』(みすず書房)
須賀敦子『時のかけらたち』(青土社)




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