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連作「わがオデッセーから」


白楽までの道 ――わがオデッセーから2



坂を下って南へ
偏光ガラスにあふれる日差し
街は
燃え揺れる
妙蓮寺から白楽までの
上気する長い坂を
われわれは下った
われわれは至った
酒も飲まず
愚者のように
絶えず光の中心にいて
河に沿って行くように陶然とあるく
存在からかぎりなく離れ
死さえも溶かす
甘やかな無の場所へかぎりなく近づくために
われわれの聖なる通過点
「セブン‐イレブン」を横切る
妙蓮寺から
白楽へ
白楽はいま
二月の明るい炎のなかにある
麦の穂のかたちに
割れてゆく
音楽
ビストロ「ガトー・クラシコ」の前で
縄跳びする少女
階段を上れば
帽子をあみだにかぶった駅員が
きらめく鋏を鳴らす
幻とともに海へ



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