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Moonshine 18


―アテネでのビルダーバーグ会議―




 きょうまでアテネで開かれていた完全閉鎖型のビルダーバーグ会議*で、なにが決定されたか。
アメリカ財政と金融の崩壊(相次いで打ち出された公金注入措置と債券発行措置=未来への莫大な計算不能なまでの政府借金は、今後数十年規模での新たな支配構造の確立を物語っている)や、比較的症状の軽微な新型インフルエンザの警告的撒布などが全地球を表面的に騒がせている現在(表面下で起こっている出来事の数の厖大さは、じつは現今、歴史上なかったほどの規模に達している気配がある)、この会議の決定は公式の国際会議の決定よりも桁違いに重要なはずだが、億単位どころか十億百億単位の個人年収を当然としているグループから外れている一般の人間は、今後の世界動向を見ながら事後的にそれを読み取っていく他はない。突然1991年の会議に招待されたアーカンソー州知事ビル・クリントンが1993年1月にはアメリカ大統領に就任した例や、1993年の会議に招待されたイギリス労働党トニー・ブレアが1997年5月にイギリス首相に就任した例などは、過去事例の中でも顕著な方だが、これらを見ていくと、いかに控えめに考えても、各国の首脳レベルの選出と内定は数年前にこの会議で決定されていると考えたほうがいい。世界各地の国内的な動き、政治動向と選挙結果、社会風潮などは、ここでの方針決定に従って捏造されていくものにすぎず、全世界規模の大資本が広告や報道を緻密に計画立てて運営していけば、大方のキャンペーンは小規模の商店街主催の盆踊り+夏祭り大会のように順調に運ぶことになる。ビルダーバーグ会議の調査に生涯をかけているダニエル・エスチューリンDaniel Estulin**は、ビルダーバーグ会議の決定にもとづく各国の政府や財界、社会へのメディアを通じての世論操作について警鐘を鳴らし続けてきているが、これは彼の指摘を待つまでもなく、シンプルに世情を眺め続けるだけでも、誰もが多少は見てとれるはずのことでもある***。なぜ、大々的な国際的宣伝を打って秘密結社イリュミナティを告発する映画『天使と悪魔』が今年世界で公開されるのか、それによってなにから目を逸らさせようとしているのかは、ビルダーバーグ会議などの実際の秘密組織の情報を補助線として視野に入れることで、ある程度は自ずと浮き上がってくる。存在しないアルカイダなるものが世界中にテロの恐怖を演出し軍需産業収益に一役も二役も買ったように、イリュミナティは、陰謀説を通じて世界の裏面を探っていくタイプの知的自己顕示に汲々としているうるさ型たちを惹きつける囮役として捏造されている。大資本とシオニストの完全な支配下にある映画産業や国際エンターティメントが配給してくるものが見せつけようとしてくるものの外部、そこになにがあるか、巧みにカモフラージュされているものはなにか、それを見ることがますます必要になってきている。もし、意識の領域においてだけでも被奴隷化をわずかでも避けようとするならば、の話だが。
 ダニエル・エスチューリンによれば、ビルダーバーグ会議の大目標は、ヨーロッパによる世界支配の再樹立で(というより、アメリカに支配権を委ねたのは表面的な政策であったのだから、いっそうの維持と拡充というべきだろうか)、SF的とも見える方法をそのために大量に投入してきたし、今後も投入していく方針であるという。例えばメディアについては、すでに新聞・主要雑誌やテレビ、映画などは完全な支配下にあるので、現在進行中なのは、インターネットの国際的な支配計画である。大企業が幾つかの中小企業を介在させることで裏に存在している無数のブログやホームページをインターネットに設けることで、これまでのマスメディアのような世論操作ができるのはもちろんだが、個人がそれらにアクセスしたり商品購入をしたりする時点で、さらに、端末を持つ世界中の個人の情報や行動動向の最低限を厖大に収集するシステム(商業サイトでは「顧客情報」と呼ばれることが多いが、アマゾンなどに見られる顧客へのお勧め商品提示機能がどれほどの情報集積能力に基づくかは、多少なりとも認識能力のある個人ならば即座に理解できるはずのものだろう)を最初から組み込んである(そもそもそのために、アメリカ国防総省独占だったインターネット技術を世界に無料で放出させたのだった)。
そればかりではない。ブログやホームページを一般人が容易に開設できるような技術開放や風潮を準備することで、食欲や性欲や好奇心などに並ぶ人間の根源欲求である自己表現欲を発現させ、比較的知的で利用価値の高い(と同時に敵対能力も高いゆえに、ブラックリストに第一に載せるべき)人物たちを徹底管理する段階を現在は進めている。これは、やがて強制的に(しかし、テロ対策や感染症対策、さらには災害対策など、止むをえぬ他の理由にもとづいて「あくまで国民を守るために」という名目で行われるであろう)国民総背番号制計画の実質的な部分(利用価値の高い/最も警戒監視すべき人材)の先行的な実施ともなる。
GPSや人体へのチップの埋め込み計画(VeriChip問題など)については、じつは携帯電話の爆発的な普及によってすでに大方実現されていると見たほうがいいだろうし、捏造された911事件後に「テロ対策」として世界に押しつけられたマネーの流れの一元的管理は、経済面からの全世界的個体管理をほぼ実現してしまっている。
とはいうものの、これらの中途半端な達成に甘んじることなく、ビルダーバーガーたち(ビルダーバーグ会議主催者たち)は、いっそう確実な全人類個体把握・管理を推し進めていく方針であるらしい。
有力政治家や各国王室をはじめ、国際的メディア、多国籍企業、多国籍金融機関のトップからなるというこの会議については、さまざまな情報がすでに存在するのでここでは詳細しない。しかし、名誉議長であるエティエンヌ・ダビニオン子爵Vicomte フienne Davignonについては、2009年初夏のこの時期、少し注記しておく必要がある。
ベルギー出身の政治家、ビジネスマン。スエズ社とガス公社合併を動かしているといわれ、元欧州委員会副議長、地中海クラブ主要頭取、ホテルチェーン・アコー重役、ギリアド・サイエンシズ社(カリフォルニア)のボードメンバー、フィアット重役、トヨタ国際諮問委員会、富士通重役、他にも十以上のヨーロッパ主要企業の重役会に参加している人物だが、この時期に特に注目しておくべきは、インフルエンザ治療薬タミフルを開発し、抗HIV薬も製造しているギリアド・サイエンシズ社との関係である。この会社の役員会には錚々たるメンバーが顔を連ねている。例えば、イラク戦争を強引に発生させたラムズフェルト元国防長官、元米通商代表カーラ・ヒルズ、インテル創業者ゴードン・ムーア、元国務大臣にして、アメリカ最大の軍需産業元取締役ジョージ・プラット・シュルツ(アメリカ政財界の秘密合宿組織「ボヘミアン・クラブ」常連で、ラムズフェルトやチェイニーとともに彼もイラク戦争推進に尽力した)など。
2005年の鳥インフルエンザ流行の際にも、エティエンヌ・ダビニオン子爵やラムズフェルト、シュルツなどの名はたびたび取り沙汰された。まだ鳥インフルエンザが発生していなかった夏の時点で、アメリカの超党派シンクタンク組織でビルダーバーグ会議と緊密な関係にあるCouncil on Foreign Relations (外交問題評議会)の機関誌『フォーリン・アフェアーズ』誌が、次世代の感染症という扱いで鳥インフルエンザについて大特集を組み、それに続いてイギリスの『エコノミスト』(ビルダーバーグ会議常連のアドリアン・ウーッリジが所属)でも同趣旨の記事が出た。2005年のビルダーバーグ会議はドイツのロッタッハエゲルンで5月5日から8日に開催されたが、ここで決定された鳥インフルエンザ撒布プランがマスコミ経由で意図的に流され、ギリアド・サイエンシズ社の株価高騰および関連会社の収益増大を誘ったといわれる。タミフルの製造・販売はスイスのロッシュ社で、日本ではロッシュ社が50%の株を占める実質的なグループ会社の中外製薬が独占販売をしているが、2005年の鳥インフルエンザ流行では、ギリアド・サイエンシズ社、ロッシュ社、中外製薬の株価が急騰した。
インフルエンザ用ワクチンそのものに、長い潜伏期間を経て当該インフルエンザや別の感染症が発症するように仕組まれているという説もあるが、そこまで行かずとも、少なくとも国際的に感染拡大を煽ることで、莫大な臨時収入がビルダーバーガーたちに入る仕組みになっているのは疑うべくもない。
2005年のビルダーバーグ会議の際に撮られた写真を、このMoonshineの電子メール版には掲載しておく****。太った男がエティエンヌ・ダビニオン子爵、彼の話を聞いているのはイラク戦争を理論的に支えたネオコンの首魁ポール・ウォルフォヴィッツである。

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*GR Reporter(News from Greece)
http://www.grreporter.info/statiaen.php?mysid=1823&t=16
**La Verdadera Historia Del Club Bilderberg (2006)、英訳はThe True Story of the Bilderberg Club (2007)。ハ和訳は『ビルダーバーグ倶楽部 世界を支配する陰のグローバル政府』(山田郁夫訳、バジリコ、 2006)。
***この「シンプルに世情を眺め続ける」際に重要なのは、個人的に注記しておけば、構造主義的と呼んでもいいセンスに裏打ちされた長期観察と長期考察の実践であり、それをつねに確保しながら厖大な世界情報を徹底的に無選別に取り入れ続ける知的肉体的体力である。正当と見える情報の怪しさも奇想天外なトンデモ情報も、一切価値評価せずに収集し意識に流入させ続けると、脳の本来の機能により、一定の量以上に情報が達した時点で、表面的な言語や表象の意味作用のメタレベルにある意味構造が必ず星座を結び始める。時流に遅れまいと早急な観察をして結論を急ごうとするような脳たちの場合、よほどの天才的な脳を除き、この機能を十分に発揮させることは先ず出来ない。
****Moonshineをブログのかたちで配信すべきだという助言を多く戴くが、時事的に他人の役に立つような情報提供は一切行わないという立場で書いているのに加えて、インターネットに載せる時点でどうしても数週間から数か月の遅れを確保したいという明瞭な意図があるため、すぐに配信できるブログ形態は採用できないという事情がある。インターネット時代において、ネットに発信する際の遅延が持ちうる効果と意味については、どれほど評価しても足りない。本来、言語表現と表象は、最深の意味での個人情報を、受け手として望ましくない他者へ容易に漏らしてしまう媒体である。いかなる場合にも他者へは、誤解と誤読を発生させるような数十の包装とカモフラージュを施した表象しか伝えてならないことは、少なく見ても、政治経済との緊密な関係の上にのみ製造されたロマン主義時代の文芸・表象作品制作以来、言語や表象を扱う者たちの常識である。あらゆる文芸作品、ことに読解困難な象徴主義的作品やシュールレアリスム的作品、および高度に有機的な意味回路の組み込まれた小説作品が政治的暗号交換の道具でありうること、現にそうであったことには、すでに言及したことがある。あれを正面から文学的・芸術的・哲学的に分析研究するのにはそれなりの楽しみもあり、なにより御苦労なことではあるが、やはり、愚鈍ということの典型例と呼んでおいてもいい場合が多い。

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