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Moonshine 8


イスラエル軍のガザ攻撃ビデオ


 イスラエル国防軍がYouTubeに開設した「IDF Spokesperson's Unit」という広報用チャンネルを見ると、ずいぶん無駄な攻撃を重ねているものだと思う。ロケット弾を輸送中のハマスを上空から攻撃した人気映像《Israeli Air Force Strikes Rockets in Transit 28 Dec. 2008》*などは40万回を超える再生数を記録したというが、ここでは数発のロケット砲を乗せたトラックを10名ほどのパレスチナ人とともに爆破していて、砲弾の無駄な使用の最たる例になっている。あの程度の敵人数やロケット数のところに高価な砲弾を打ち込むのでは、いくら軍事費があっても足りなくなる。イスラエル軍司令部は、せめて30名以上の敵人数、10本以上のロケット弾が集結している場所を攻撃するように指令し直したほうがいいのではないかと思わされる。世界中の空軍関係者は、はたしてどう見ているだろう。そもそも、砲撃チャンスのミスと砲撃目標のミスとの両方を犯しているのではないか。トラックが二台並んでいた時点で打ち込めば被害はもっと大きく、殺傷人数も多かった。ハマス(?)のロケット弾はトラック停車位置に近い建物から運び出されているのだから、建物自体を複数の砲弾で攻撃すればもっと大がかりな処理も期待できる。それに必要な破壊力の砲弾は装備していなかったということか。
 この攻撃ビデオは、イスラエル国防軍が自らの軍の攻撃方法の拙劣な部分を公開しているわけではなく、明らかに矜持を持って公開しているのだろうから、あのようなケチな攻撃成果も大いにヨシとしていると見ていいのだろうが、そう考えると、ここの国の軍隊というのはちょっとお脳が弱いのではないかと思わされる。お脳が弱いわけでこんな映像を公開しているのでないのだとすれば、ひょっとしたら見本や模範演技のつもりなのか。ガザ地区は途方もなく狭い土地に人口が世界でも最高度に密集している場所であるそうだが、今回の攻撃はひょっとして、負ける心配のまったくない場所をわざわざ選んだ上での軍事演習なのかもしれない。さらに言えば、あのような無駄の多い砲撃を行っている映像を平然と公開できるということは、砲弾の在庫整理や前年度軍事費消化の意味合いも大いにあってのことか。ともあれ、このところ急降下していた原油価格はこのガザ攻撃のおかげで急上昇し、これを利用してこの一週間で、またもや大儲けした人々が出た。そういう筋からの要請もあったということなのだろうか。
*http://jp.youtube.com/watch?v=qG0CzM_Frvc&feature=channel_page
 同じYoutube内では、個人的には《Gaza: The Killing Zone - Israel/Palestine》**という取材映像が大いに参考になった。これは、やはりイスラエルの攻撃が激化していた2003年5月の時のものだが(4月にはガザへの連日の空爆で被害が拡大していた)、そういう場合のガザ地区での日常というものがどんなものかが、他のどんな映像よりもよくわかる。取材にあたったジャーナリストもカメラマンもまさに尊敬に値する仕事をしていると思う。まだ見ていない人がいたら、この映像はぜひお薦めしたい。
**http://jp.youtube.com/watch?v=l0aEo59c7zU
 これを書いているのは日本時間で1月7日、午前2時近くだが、フランスのLe Mondeウェブ版***では、パレスチナ側の死者635人を超えた今回の攻撃に対して、これまでイスラエルの行動を黙認してきたアメリカ合衆国がついに即時停戦を要求したと報じている。この数日の原油価格上昇で十分に利益を得たからか?それとも、一定の兵器在庫整理を終えたイスラエルへの、次回の兵器輸出が保証されたからか?Le Mondeのこの版は、同時にこのような写真を載せている。日本の新聞には断じて載らないような写真だ。
***http://www.lemonde.fr/

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