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                   駿河昌樹詩葉・2000年1月



まだ 生きているわね 鯉、 お前裂いて




わたしは髪を洗う女である男である少女、鯉を裂き
きょう、泥の味ゆたかに煮付け 殺した愛人の子等に出す。
子等、わたしの背丈を越えた十九の若者
と まだ十の 頬やわらかい少年 背をすこし丸めてうつむきがちに食べる。
殺された粗暴だった父を思うの? 殺されるにふさわしかった
父、あんな男? わたしの前で?
わたし、少女 この子等 わたしを愛するかしら、わたしのからだ 匂い 男
である少女 髪を洗う

である男
であるわたし、鯉を裂き あの子等に食べさせる わたし、
男 乳房ゆたかな
男 だれより泥と濁り水にからだ浸して
きょう裂く鯉も 腕と乳房で捕えた
鱗が乳首を幾鱗も滑り 殺した男の血のぬめり 思い出して恍惚。わたし、
この子等をりっぱに女にしよう すぐにも男根ふたつ切り落として
吹き出る血を口で覆い 宇宙のべつの回路へと子等を導く 傷口落ち着いたら
新しい鯉の内臓を擦り込もうか それとも父親の脳のすり身を塗り固めて
すべらかに美しい つるつるの股間の再生 待つ

わたしは髪を洗う女である男である少女、殺した愛人から絞った血で
ながくながくねっとり髪洗う男少女 まだ
生きているわね 鯉、お前裂いて
きょう、泥の味ゆたかに煮付け 殺した愛人の子等に出す。







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