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ARCH 37

                   駿河昌樹詩葉・2001年4月



平成小唄




あたしのいるのはこんな場所、
待っているものは来ないし、
こころ踊るものはみな、とうに逝った

あゝ、からだなんて
ほんとにあたしなんだろうかしら、
ほんに重いサねェ、この着物

思い描けども、なにひとつ
実現などせぬと知っているわサ
だどもな、思いよ、あたしのかわりに舞ってゆけ

こころ、日がな日がな、くたびれさするを
神様は唯一お望みじゃろか
暮れがたの陽に疲れ、日陰にさぶしみ

だれに恨みのあるわけでもねども
あたしゃ、うらぶれた浜のやぶれ屋
風つめたヤ、さびしヤ 月かげ

父母も、いまはまぼろし
温もりの、ちったァあった子ども時代も
波かぜのかなたに霞み

時間の滓か、残り葉か
重いからだも冷え切るまゝに
うつらうつらと坐る板敷き

願いさえ、待つものさえなく、来世さえ
くり返しよと覚悟して、あゝ、寂し
すべなし、とおはら遠原のほの明るさよ 







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