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ARCH 38

                   駿河昌樹詩葉・2001年4月



もういないのだぞ あの桜




木の切られていくかなしさ
壮年じゃないか、ひとならば
りっぱな木たちが
安い模型セットみたいな
つまらぬ家をほっ建てるのに
ここでもあそこでも殺戮されちゃった

おおぶりのいい花をつけていた
となりの桜が倒されたのには まいった
花のさかりに切りやがったのだ
隣りあっていた柿と銀杏の
やわらかなうす青葉のさびしさよ
もういないのだぞ あの桜
また来ん春に 花のたよりの届くころ
あいつを思って宴をしよう
ひとしおだったことしの花も
最期と知ってのことだったか

こま切れにされた輪切りの胴の
小山をつくっている夜ふけ
そっとかたみを拾いにいって
花のたわわな枝数本
握って戻ってきて見ると
たしかにたわわに花ざかりだが
どれもぐったりしおたれて
くしゃくしゃの皺の花びらが
浜に寄せ来たさざ波の
終わりの白のふつふつの
こころへ消え行くさまのよう







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