[ NEXT ][ BACK ][ TOP ][ INDEX ]


ARCH 45

                   駿河昌樹詩葉・2001年5月



はなやかな場所 もしくは約束の場所にむかうように




時間は継続しているなにかではない
一瞬一瞬は繋がっていない*
冬に入るゆうべの森よ
暗い風にゆれて
別れていくもののあるのを励ます
車から降りてわたしたちはしばらく見ていた
寒さに身が耐えられなくなるまで
このさびしさはなんと確かなのだろう
はなやかな場所
もしくは約束の場所にむかうように
やがて車に乗りこんで
わたしたちははっきりとドアを閉める
ゆうべの森は
いよいよ暗く揺れて
ここからは見えない**が
やはり暗く風の抜ける山々につながる
別れていくもの
別れていくもの
その山々のほうへ
わたしたちは永遠にむかっていく



*道元、参照。「たき木はひ(灰)となる、さらにかへりてたき木となるべきにあらず。しかあるを、灰はのち、薪はさきと見取すべからず。しるべし、薪は薪の法位に住して、さきありのちあり。前後ありといへども、前後際断せり。灰は灰の法位にありて、のちありさきあり。」(『正法眼蔵』現成公按)
**関富士子『河の風景』("rain tree" no.19. 2001.2.25)







[ NEXT ][ BACK ][ TOP ][ INDEX ]