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駿河昌樹詩葉・2001年9月
わたしはだれにも見えない秋のさかり
霧がからだを引きうけて海のはじまるあたりへ延びている
わたしはだれにも見えない秋のさかり
足指の
先で水際に触れれば
この海に沈んだままの鐘がさらに白く、白く、と 霧に告白をする
むかしの鐘の音のよどみ
そこに生まれた気のゆがみに
浮き出た淡い影絵の
わたし だったか
はじめからお仕舞いまで
死に続けだったかのようないのち
死のさかり
秋のさかり
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