[ NEXT ][ BACK ][ TOP ][ INDEX ]


ARCH 65

                   駿河昌樹詩葉・2003年8月



むらさき市民




テーブルのわきに貼ってある蛍光ペンは
みどりの
明るい海に通じている


        「あなた?
     おさかな
            食べちゃったの?」

と 明るいぼくは言っている
だいじなのは   そう、
つなぎ具合だもんな


モンナ モンナ


        アンコが
むしょうに食べたくなってしまう
ぼくはこてこてと
背骨を
すりあわせて磨くように妻の
ふりを続けていた

冬 大量のしろ毛を
なんとこれから
紫に染めようと意気盛んな市民たち
大きな沼が
舗装のゆきとどいた広場ちかくに発生いたしまする
湧き出る紫の冷水
その水を使って

もしぼくらが
つまり きみやぼくや彼なんかが
ショッピングモールの端のお菓子屋さんで アイスモナカを
買いたくなったとして
しかし
チョコバーとか抹茶バーしか見つからなかった
とした場合

そう 食べたくなったのは
アンコだったじゃないか と反省する方向があり
買い控える
控え得る カモシレナイ。
なぜアイスモナカであったのか?
発端はアンコであった と
歴史を辿ろうとしつつ
正しく

市民は(まだだが) 見る間に
見る見るうちに
紫に染まっていく
大量のしろ毛を抱えて
押さえ込んで
見る見るうちに
紫に染まっていく
市民自身 も(まだだが)
      (まだだから)

まだ起こっていないそれら
みどりの明るい海だけが今はあって

蛍光ペンを剥がし
明るい海に抜けていこうか

でも剥がさない

(何色の蛍光ペンか 言わないでおく
だって、効果
損なわれなかったでしょ?)






[ NEXT ][ BACK ][ TOP ][ INDEX ]