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駿河昌樹詩葉・2003年8月
むらさき市民
テーブルのわきに貼ってある蛍光ペンは
みどりの
明るい海に通じている
「あなた?
おさかな
食べちゃったの?」
と 明るいぼくは言っている
だいじなのは そう、
つなぎ具合だもんな
モンナ モンナ
アンコが
むしょうに食べたくなってしまう
ぼくはこてこてと
背骨を
すりあわせて磨くように妻の
ふりを続けていた
冬 大量のしろ毛を
なんとこれから
紫に染めようと意気盛んな市民たち
大きな沼が
舗装のゆきとどいた広場ちかくに発生いたしまする
湧き出る紫の冷水
その水を使って
もしぼくらが
つまり きみやぼくや彼なんかが
ショッピングモールの端のお菓子屋さんで アイスモナカを
買いたくなったとして
しかし
チョコバーとか抹茶バーしか見つからなかった
とした場合
そう 食べたくなったのは
アンコだったじゃないか と反省する方向があり
買い控える
控え得る カモシレナイ。
なぜアイスモナカであったのか?
発端はアンコであった と
歴史を辿ろうとしつつ
正しく
市民は(まだだが) 見る間に
見る見るうちに
紫に染まっていく
大量のしろ毛を抱えて
押さえ込んで
見る見るうちに
紫に染まっていく
市民自身 も(まだだが)
(まだだから)
まだ起こっていないそれら
みどりの明るい海だけが今はあって
蛍光ペンを剥がし
明るい海に抜けていこうか
でも剥がさない
(何色の蛍光ペンか 言わないでおく
だって、効果
損なわれなかったでしょ?)
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