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戦争…
 〔あめりかニヨルいらく攻撃切迫ス、ト風評喧シイ頃ニ〕


戦争…
起こっては 去っていく

戦争…
起こしては 去らせる人びと
次世代の邪魔をして居座る
饐えた脂肪のつまった
精気のうせた肌でできた袋たち

戦争…
起こされて 去らされる人びと
住んでいる街から
村から 国から
そして 命から 宿命から
倦怠から 停滞から 絶望から

戦争…
反対する人びと
自己宣伝や商売っ気から遠いわけでもなく
売れる
売れる
反戦グッズ
それに 連帯の
ひさしぶりの
甘い夢

戦争…
また今度も黙っている人びと
やっぱりなにもしない人びと
たとえばジャポニカ種のヒトのように
あのヒト このヒト
そう、
あなたのように

戦争…
長いながい歴史の中
とっくに出てしまっている結論
起っては 去っていく
起らなくなる時は来ず
去らなくなる時も また来ない

なくならない

戦争…
つまりは人間、ということ
だれひとり逃れうる者はいない
殺される者は殺され
殺す者は殺す
おしゃれに反対を叫んで
日曜日だけ公園に集まる者
ソファに安らいで傍観する者
ビールを手に嘲笑批判する者
ワインを前に情勢を弁ずる者
多くの殺戮をしてきた宗教の寺院で祈る者
ヒトたれば いずれかを演じる
逃れることはできない
この劇からも

戦争…
ありえたかもしれないあなた自身
さまざまな役割とすがた
あそこにも ここにも
あなた

なさいな、戦争
安心して
殺す相手は どうせあなた自身
あなた自身に殺され
あなた自身に無視され
あなた自身に祈られ

戦争…
捨てるべきは たぶん

たましい
愛などというくだらない言葉
生甲斐などという幻想
達成という慢心
アイデンティティという安手の鏡
そして もちろん


戦争…
殺し
殺されるべし
虚心に
食べ続けられる動物たちにでもならって
虚心に

ときどきは悶え叫び
しかし けっきょくは諦めを
すべて流れ去っていくままにするのを
遅まきながら
付け焼刃にでも 最期は
学んで







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