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充電ということにうんざりしている



携帯電話に興味がない

いろんな機能は便利かも、とは思う
でも、充電ということにぼくはうんざりしている
エネルギーがまだ保つか切れそうか
そう考えるのがわずらわしい
自分の一日のエネルギーの持ちぐあいを思うだけで精一杯
携帯とかデジカメとかモバイルパソコンとか
そんな連中のエネルギーなんて考えてられないよ

というわけで携帯に興味がない

音楽好きでいつもウォークマンを
CDウォークマンを
MDウォークマンを持ち歩いて何台となく聞き潰してきたから
音楽という構築体の全パターンをすべて
今生では聞き終えたと悟った瞬間が四年前にあった
それ以来いっさいウォークマン的なものは持ち歩かない
iPodは遅すぎた
もう音楽を聴かない人間にあれは不要だし
それに充電とか音楽データ入力とかがわずらわしい
だんだん時代にあわなくなって自分がポンコツになってきた
というのではないと思う
ITとか言いながら
時代はずいぶん低レベルのところを
じつは周回しているだけ

充電が必要なんて時代遅れもいいところ
聴きたい音楽を自分で取り込むなんて
アナクロニズムにもほどがある
だいたい音楽などという物理的刺激段階を経ずに
じかに神経に電気的刺激で興奮を伝えるべきだと思う
物理的な段階を経るなんてダサい
このところ
人類はずいぶんとレベル低下したまわり道ばかりしている
たぶん一部の製造業者たちの儲けのために
そろそろ物質は捨て去るべき時代だというのに

こんな考えなものだから
ずいぶん問題になったという
AUの戸田絢子さんという人の論文も
商人としてはごく当然の見解だとしか思えない


《メーカーは、携帯のビジネスモデルの何たるかを全く分かっていないんです。家電+ネットの、検索+比較(価格.COM)モデルで考えられると困るんですよね。メーカーが勝手な競争を始めないよう、常に私たちの指導が必要なんです。
  (…)
団塊の世代などと異なり、たまごっち世代・ゆとり世代はカタログ仕様や契約書の理解・比較力が低いのが救いです。彼らには、感覚的な満足度のみが重要なので自らが選択・決定している気分を常に与え、不満を具体化させない演出が必要です。》

  戸田絢子『携帯電話の機種変更によるユーザのメンタルモデルの変容』
            (「ケータイ・カーナビの利用性と人間工学」、pp.135 -140)


これがほんとうにこの人の論文の一部ならば
ずいぶんと穏やかな議論
どこの商売だって
もっと顧客をえげつなく分析しておくのが普通だろう


「Blog:えいりーくらぶ」の高校生の書き手さんは
この戸田さんの見解を見て

《どうやらこの理論でいくと「ワンセグ+大容量フラッシュメモリ+高画質カメラ+高解像度ディスプレイ+Bluetooth+高速通信」だとかいう携帯はどれだけ待っても発売されない、ということになる》

と心配なさってもいる
ま、どうでもいいじゃない、そんなの
と言いたくなるが
きっとそういう携帯は開発されるし
こんな低い機能で満足しない優位機種がさらに出てくる
とぼくは確信している
スパイ衛星を地上から位置確定して
その機能を乱したり自爆に到らせる携帯電話がすでにできているのだから
軍事と民間の境目をどう捉えるかという問題にすぎないかもしれない
ま、ワンセグなんて
くだらない内容を放送して民間を誘導するためのものだから
受信すれば被害を蒙ると考えるべきかもしれない
ぼくなら
アメリカ軍の管理システム網をぜんぶ受信したいね
ワンセグだなんて
なんて欲のないことを!
と感心いたします
です

iPhoneだったら
ぼくでも買いたいかも
ドコモやソフトバンクの使っている3Gネットワークは
欧米では普及していない
GSMのようにそれが広まっていないから
日本用iPhoneを作るのは根本から変えないといけない
いったい日本は携帯で進み過ぎたんだか
おかげで結局ハシゴを外されることになるんだか
携帯端末の問題が
またまたうっかり日本村八分論になっていくような気配

そういったことはともかくとして
充電ということにうんざりしているわけ
なにかを持てばその世話をしないといけなくて
世話をするとなると意識が散って集中できなくなるので
構造的に幾重にも幾重にもうんざりし続けていくわけ

ぼくを最高に疲れさせる未来の光景――
これから先の人類がみんな
ひとりの例外もなしに
みんな
みんな
携帯端末を片手に持って生きるしかなくなっていく光景
もう
からっぽの両手を振ってのんびり歩くなんて
ないんだ、人類には
未来の人類にとっての第1現実は
あの小さな画面
目の前の街や原っぱの風景は
第2現実にぐっと退いてしまう
だれもが
あの小さな画面を心のホームページにして
せかせか足を進めていくだけの
地球……


地球をさっと救う方法、あるよ
ある科学者と話していたら
あるというのだ
そんな方法が

原理は簡単
地上で電気を消滅させてしまうんだよ
体内で生じる程度のものを残して
十九世紀以降に普及した人工電力の類が作れないようにしてしまう
軍事用にはもう実現されている
局地使用では可能だ
ヒトの体内電流を一瞬に消滅させる方法もできているしね
じつにキレイな兵器なんだよ
脳内電流とかがさっと消えるんだから
血もでないし
痛みもない
いくつかの国では
すでにこれを使った処刑室ができているし

話はいくらでも続くので
ここらで止めるけれど
充電ということにうんざりしているわけ
抽象化して言えば
このうんざりは
永久機関を手に入れられない絶望
みたいなもの
かな
ダ・ヴィンチのハイレベルの絶望に
構造的には近い
絶望





「ぽ」186 2007年6月

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