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フェラガモのサングラスをずらして



ぼくはお金なし
でもちょっと友だちがいてね
海辺にも山にも
ときどき遊びにいける
かれらはお金持ち
ぼくがみごとにお金なしなもんだから
かれらとしちゃ
気持ちが楽みたい
自分よりお金持ちになる気配はないし
もうけ情報を利用できるようなツテもないし
おい、ちょっと別荘にこないか
そう呼ばれて
(電車賃けっこうかかるなあ)
なんて思いながら行くと
いろいろおしゃべり相手になって
夕方にはテラスでカクテル
そのあとはステーキパーティー
お金なしであっても
現にありついている肉の旨さは現実
王宮に奇跡的に重宝された
ラ・フォンテーヌみたいな気分
古今東西お金持ちは
いくらお金があっても
ひとりでいてはつまらないから
ぼくみたいなお金なしの
おしゃべり相手を求めるものらしい
おかげさまで
この高原の朝霧の静寂
この海辺の夕方の潮騒
お昼のテラスのシエスタ
太陽がいっぱい
なんてつぶやいちゃって
まだ生きてるもんね
なんとかかんとか
そんなふうに思いながら
フェラガモのサングラスをずらして
またドンペリに手を伸ばしている





「ぽ」275 2008年3月

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