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東からの風



東からの風がつよいね
寝室の
南の窓を開けはなったら
そこからも風
暑かったきのうまでが
うそみたいな日
ひどく蒸していたのに
昨晩の激しい夕立が
ぜんぶ拭きさらっていったみたいだ

こんなすてきな日には
なにも考えないのがいい
あれこれ迷うのも
仔細に検討するのも
たいして意味はないものだと
もうわかっているのだし

冷やしておいた水を
そのまま飲むのが
こういう日にはうれしい
コップを持ちながら
人間っていうのは
どこかの方角を
向かなければいけない
どちらを向いても
きょうはすてきな空がある
うすくむらさきがかった
あこがれのような雲
ほら
あそこにも
そこにも

こんな空の日
人間であるのは
そうわるくない
東からの風が
やっぱりつよいね
そろそろ暮れ方
あこがれのような雲は
どんどん色を増し
大空全体に
あこがれが広がる
水の入ったコップも
ぼくらのこころも
それを逐一写しとるだろう
そうして
いつものように
忘れていく
なにも保たない
コップは空になり
こころもからっぽになり
あしたには
またあしたの
あこがれを
受けとめるだろう





「ぽ」304 2008年7月

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