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またべつの夢のほうへか



ふかい眠りのはてに
また
ふかい眠り
めざめたと思うが
ほんとうだか
あたまも
こころも
しびれたようになっている

短い時間
ふっと陥った
くれがたの眠り
気づくと
椅子の上で身を傾けている
寝入る前に
ここにいたのだったか
世界はここだったか
それさえ不確かで
夢のなかのあれこれが
まだ目の前を舞い
からだに揺れる

蝉の声がきこえる
軽トラックの止まる音
荷物を出し入れして
また走り出す音

この夏も
くずれはじめた
暑いふりをしているが
もう秋は
まわりこんできている…

かつて
にっぽんというところで
いくつも夏を
過したことがあったと
たましいの端っこで
いつか
思い出すための
そんな年月でもあったか
過ぎていくことばかり
あきらかで
ふりかえれば
生きたのか
なにかをしたのか
ぼんやりしているだけ

やるべきことが
いくつか
あったような
なかったような

立ち上がりながら
思うが
どこへ立ち上がるのか
また
べつの
夢のなかへか
夢の
ほうへか





「ぽ」306 2008年8月

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