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大きなりんご



大きなりんごがある

日も暮れた

友とピアノを弾く予定だった
数週間前からの予定
聞き手はもうひとりの友
その友の別荘での
三人だけの演奏会

なんと暗く
みずうみは夜に
入っていくことか
夜とみずうみは
混ざって一体となるのか
夜湖
ほとりで
朝まで
生き
耐えられる
心？

友の死はきのう
連絡は
いましがた
もう遅いから
帰るのは
あした
忙しくなるのだろう
葬儀と
悲しみと
そのほか
諸々のことで
きっと

夜湖
ほとりで
今宵ピアノは弾かず
友のいない音に
包まれる
もうひとりの友が聞くのは
その音

（大きなりんごがある

（りんごは
（音と
（かかわりがない

（夜湖とも
（かかわりがない

（大きなりんごがある





「ぽ」323　2008年12月

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