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山なみをさえぎって






ジーンズ
洗ったばかり
吊るしてあるけれど
濡れたまま
よく脱水しなかったものね
ぽたぽた
滴が土に落ちる
いい音
生きるのには
ふさわしい



遠くの山なみが
うっすら青くかすむ
こころは
飛んでいくよ
あこがれる
ばかりだった
こころ
深さと充実
いつもどこかに
感じあてて
海綿みたいに
よく吸えるよう
いつも空虚で


はだかの尻のまま
山なみをさえぎって
なにを
さがしているの
  ぼくの前を
よこぎっていく
おまえ
ボタンをとめず
しろいシャツだけ
はおって
すこし肌ざむくない?
しばらく
陽のあたる窓辺をさまよい
きっと
また
出ていこうとする
家のとびらから
山なみにまでずっと
ひろがっていく
草の原へ
むこうへ



「ぽ」346 2009年4月

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