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挽歌



とおい書斎に旅に出ようよ禿隠し おまえはポン太だ、
ポン汰(違う漢字って感じってのは飽きちゃったから太にネ)違いない(どうしてこんなにすぐ飽きちゃうんだろう人にも人格にも体位にも詩人にも音楽にも都市にも飽きてふるふると揺れる美しい仕事が待っているのだよ
   (書斎!嫌いな言葉だ!停滞がありブルジョア根性がある!書斎!
   (足裏に膣のある鮫の娘よ、抱き癖のついた夏の末、ちんぽぽ、
   (ちんぽぽ、と際物言葉して
   (アルチュール改行、西行でなく、あ、西行開業、
   (どうせ馬鹿さ、死ね。
   (さあ。
   (さあ。
   (さあ。

こうして少しずつ掘っていくのです。ときおりはふいに掘りの深まりが来る。
ぼくは雪、
とおい林が晩秋のさみしい枯れ色にさわさわ鳴って雪、
降り出し、別れ、ちらちらと固形の思い出が無数の透けた小魚のように
   (止メル。此処で。
   (そうして行くのだ、傍らになどいたことのない無明の同志よ、とうに
   (明かりなど消え果て 君の持っているのは氷柱か蝋燭か
   (もうわからない
   (もうわからない
言葉 掘る 深 枯れヨ 無花果まで貫通して
   (止メナイ 此処では。
意味と表現の剥離は健在でアレ まだ行く行く行く 無花果まで貫通して
ぼくは雪、雪は林、とおい小魚の、枯レ、ヨ、……そうだ、この現場で、
わかる、言葉たちは往々にしてじゅうぶんな余韻に欠け
まるで乾季、叫び過ぎた現場監督の喉の響きのようにプツット切れ過ぎる
外郭をもっと溶解せねばならぬ ぼくも 物たちも  …そろそろ
離陸、んぐっ。!。。。。。!!。。。。。馬鹿!離陸には動力がいる。重力に私たちはいかに逆らおうとするのか。重力はむなしさ。みんな火葬場に正確に向かっているだけなのに、ジンセイ、イキガイ、バッカミタイ、るるるるるるる
   (裕福な大家族を持つ夫と結婚した夜、裕福な大家族の
   (三世帯が寝静まる大きな家で私は思った、ひとりぼっちだ、
   (点火される前の火葬場の窯の中にいるみたいに。この世ではすべて
   (時間の差にすぎない、今日焼かれるか、二十年後に焼かれるか、
   (ただそれだけのこと、まだ焼かれない私、ダカラコソ確実ニ焼カレル、
   (いつか。
いつか、みな、ふたたびたった一人での質素な暮らしに戻りたがる。たった一人でないと回復できない生の手触りがある。それを
思い出すために、ために、ために、     おお死よ / さて、サケの
ムニエルを少し食べ過ぎて
   (さびしい、さびしい、と耳の近くで小っちゃな霊の声。小鈴の
   (チリン、チリン、竹林が広がり、ぼくは別れる。ほとび、じょぐ、
   (じょぐ、と、熾火のまわりに湿ったものが集まってくる雰囲気があり、
(ナンデショウネェ、と、死んでいるのか生きているのか
   (わからない友1とはっきりと死んだはずの友2とが交互に吹き寄って
   (つめたい集いをしている。わたくしも参加しているのですよ。

           ぼくは雪、
とおい林が晩秋のさみしい枯れ色にさわさわ鳴って雪、
降り出し、
別れ、
ちらちらと固形の思い出が無数の透けた小魚のように


           (こうして少しずつ掘っていくのです。
   (ときおりはふいに掘りの深まりが来る。
   (重力はむなしさ。


まだ行く行く行く





「ぽ」101 2006年4月

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