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はっ。
冬枯れの清河高原から
タコチュウ〜、とぼくは叫ぶ
太陽がゆらいで骨折から
タコチュウ〜、とぼくは喘ぐ
赤い本を持ってきたかい?と何度も聞いているのに答えない
紅(くれない)紀子ちゃん、
ちゃんとこっち見ててよね、
まったく。タコチュウを使って詩を書いてみろだなんて、
どだい、ムリな話だってのに。
ボクの奴め。
ボクはいつもこんなふうにぼくをいじめつけくさりやがるのだという話でござるのよと言ってもしょうがないのだけどほんとうだもの、「おまへの敵はおまへだ」(石川淳の戯曲タイトル)。
ここまで来ると
どうにか紅(くれない)紀子ちゃんに救われるのだ。
人名は救い。
人命を救え。
はっ。
消防士たちは敬礼して散っていった。
いいぞ、丑松。
その調子だ。
ボクはボク。
でも
ぼくはぼく。
はっ。
「ぽ」130 2006年8月
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