[ NEXT ][ BACK ][ TOP ][ INDEX ]


ホテルのこの大きなラウンジのカフェでは



そのうち
また 話しましょう

とはいうものの
盛り上がらないだろうことは
わかっていて

言いながら
わかれを先取りしている

たぶん、永久の
わかれ

口に運ぶカップに
もうコーヒーもないし



ホテルの
この大きなラウンジのカフェでは
椅子も観葉植物もりっぱなのに
目に入らないほどひかえめ

人さえいなければ
たぶん、天国

もうコーヒーもないけれど

まだ
わかれも先のはなしで



みんな
こんなにひとりで
生きているのか、と
思いもわくけれど

わたしだけならばいい

地上で
たったひとつの真性の
孤独

舞い降りたのが
わたしの上にだったのならば
いい



人がラウンジを立つときは
コーヒーを終えたときぐらいのもので

永久のわかれさえ
永久のコーヒーに、きっと
左右されている

手をあげて
ウエイターを呼ぶだけのことなのに

それができない時もあり

なぜだか したくない時も

ある





「ぽ」131 2006年8月

[ NEXT ][ BACK ][ TOP ][ INDEX ]