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水平線のむこうから



澄んだ薄いコーヒーのような
ラムラの胸の色
髪から垂れるしずくが鎖骨から流れて
その谷の奥へ落ちていく

海から上がってきた若い女よ

呼吸がしだいに整っていくまで 世界を
もう一歩
踏み込んで忘れようと努めていた
ぼくの小さな頭の中での
小さな操作

だれも、
なにも、
かにも、
忘れようとして

また水平線を見ている

いつかあの線をまたいで
えもいわれぬなにかが一足とびに
この浜に来てしまうよ
とラムラに言おうとしている

でも、言わないで
ラムラのブラジャーをはずす
谷の内側を
また
吸いはじめる

水平線のむこうから先ぶれに来た
しずく一滴の後を
追って





「ぽ」143 2006年9月

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