[ NEXT ][ BACK ][ TOP ][ INDEX ]


入っちゃう ちっちゃなハンバーガー屋



ぼくをさびしくするばっかりのあの人たちに
やっぱり 会いに行かず
入っちゃう
ちっちゃなハンバーガー屋

チェーン店じゃなしに
たった一軒でやっているけなげな店で
焼きはじめるのは
客の注文を受けてから
半額の日替わりバーガーなんて一四一円しかしなくて

ぼくが行く時間には なぜか
だれもいないから
戸外を見ながら出来上がりを待っていたり
食べながら店内の飾りにきょろきょろしていたり
こんなのがぼくの
ほんとうのしあわせ

自慢ばかりされたり
人と人の比較ばかり聞かされたり
けっきょくは自分の話ばかりに持っていかれたり
もう どうでもいい
ふつうの人生というものが
あんな人たちとつきあうということなら
とっくに捨てちゃってます それ
ぼくの場合は

さびしくないほうへ動こうとすると
一度はすっかり
ひとりっきりになってしまうよね
そんな時期に
ちっちゃなハンバーガー屋が見つかって
ほんとうに
しあわせでした

二重線でしっかりと消したあれこれ
自殺予定日の
段取り

そんなページもある手帳に
「×月×日 きょうのフィレオフィッシュは香ばしくておいしい。
      あす、伸びすぎたジャスミンの枝の剪定をしなきゃ。」
こんなメモを
きょうも

だれにも見せないページに
だれにも聞かせないことばを記す
よろこび

閉じている
のではなくって
閉じている
のではなくってね

四つ葉のクローバーをさがすように
みどり鮮やかな
ちっちゃな
しあわせをたどって
点、
てン、
テン、
…、


世界をわたる

                          *桐田真輔氏のネット上詩誌『リタ』に掲載された詩篇に変更を加えた。





「ぽ」145 2006年9月

[ NEXT ][ BACK ][ TOP ][ INDEX ]