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花園



愛しはじめて間もないんだね
あのふたり

からだに腕を絡めあい
見つめあったり
遠くにまなざしを放ったり

かるく
唇をすべる唇
饒舌と
繰り返されるふいの
沈黙

ぼくはといえば
少しずつ
あらゆるふたりたちを生きるようになって

もう むかし話もせず

あの頃は、と
自分につぶやきもしないし

去ったまなざしを
崩れる
噴水の水玉に
探そうともしない

だれも やがては
遠巻きに望む側にまわる

ぼくを包んでいたこともあった永遠

いまは往け 未来の
新しい あらゆるふたりたちの
ところ たとえばこの花園のあそこの
ベンチのふたりへ


  (からだに腕を絡めあい
  (見つめあったり
  (遠くにまなざしを放ったり

  (そして
  (かるく
  (唇をすべる唇

  (饒舌と

  (繰り返されるふいの
  (沈黙





「ぽ」148 2006年9月

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