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                  駿河 昌樹 詩葉 二〇〇六年三月

                    先行・平行する自身の詩文一切を否定し、不断の推敲凝縮によって
              幾許かの結晶に到らんとするために。したがって此処では、同じ詩作品が無限回
              改変されて発表され続ける。




秋に陥らぬ(第七推敲版)




求められずとも 遮られたまゝに微光する森
樹根は憂いの底にも青く光を汲み
透いた七つの海へ張られる帆には
草、ちぎれぬ夢、執拗なランプ

炎ばかり繊く揺らいで

怠らぬ肉化の無数の階梯を保てば
回廊の化学より細い先触れの木の端まで我が身
主(あるじ)の寄せぬ音なき収穫の水路を守って
天球儀に読み上げる青い地名の幾つか

足うらは現在に親しみ

床や石畳に降りたまゝ 秋、秋、秋、
ちぎれぬ夢を漂わす秘術より古く
印刷され忘却された空の青さえ剥がれて 透く
指紋になお留まる 薄く細い民族たちの末裔

焦げ始める水晶様の繊毛の先には
虚空の宮廷 すなわち鮮緑の蛇
(やはり)友でしかなかった水路か…
流れゆく古さのまゝ とうに紐解かれている秋







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