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百軒



細い水の流れを
たどっていくと
たいてい村がある
ああ
そんなこと言っちゃって

猫がいる
それは笑っているけれど
石塀は苔むしたりしてね
着流しの男であるぼく
浴衣ぐらいしか着たことはないが
猫はいつも
着流しの
茶色と
白のまだら

どぶ川からお話が始まる
村が百軒を擁して
道はまん中を貫いて
藪がいまにも
道を覆うように茂り
少しいくと
少女が
ふっと横切り
のぞくと
おばあさんが縁側で
針仕事みたいなことをしている

見上げると青い空だ
もくもくと湧いて
羽虫もいくつか飛ぶ

ふと手のひらを見ると
丸い氷が溶けてくる

ああ
眉も白くなっているかな



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