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シマアジ



褪せていく写真
かたつむりの管のように
下りていく井戸から
カメを頭でささえた女たちが
水を運んでくる

海景が変わるんじゃなくて
こちらのアタマが変わるんだよね

その日のうちにセピアに変わるかもしれないけれど
切り立つ崖を右手に見ながら
入江を通り過ぎる

シマアジの養殖場の近くに
赴任される教師の住宅があって
また道をはずれれば温泉が湧いている

アラベスクってどんな綴りだっけ?
arabesque
アラベスクの光がそれは
あの日からそしてあの日に
つながれて朽ちていく
ぼくは小心者だなあ

宮川タンはあの崖から道を造り
漁場を見下ろす展望場を造り

港では稚魚が海面をけばだてて
回遊し
生きているアラベスクで
見る人を飾る

遠い樹木は
翳ったり染まったり
巨きな乳の青い血管のように
写し絵になる



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