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第五回東京ポエケットに遊ぶ





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 2001年12月1日、東京江戸博物館(一階会議室)で開催された「第五回東京ポエケット」に行った。「TOKYOポエケットを推進する会」(ヤリタミサコ、川江一二三、海埜今日子さん)の主催によるこの催しは、詩の同人誌・個人誌や詩集の展示即売と、ゲストによる詩の朗読パフォーマンスを兼ねた交流の集いで、99年12月の第一回以来、毎年二回のペースで開催されている。


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 パンフレットによると、今回の参加出展者(同人誌・個人誌・出版社の代表)は、15組(後にひと組追加参加)。ちなみに手元の資料でみると、第一回が19組、第二回が19組、第三回が21組、第四回が18組。やや少なくなってきているという感じもするが、これは開催日の曜日がここ二回ほどは会場の使用スケジュールとの関係で、土曜日だったということも関連しているらしい。以下に今回の出展者の誌名と代表者のお名前(括弧内)をパンフレットから転載してみる。

 「ガーネット」(阿瀧康)、「ミッドナイト・プレス」(岡田幸文)、「心の友」(究極Q太郎)、「hotel第二章」(根本明)、「松下真己as死紺亭柳竹の妹連合」(松本温子)、「さがな。」(松本和彦)、「三度のメシより朝ごはん」(真方虎之助)、「プラネッタポエーネ」(石渡紀美)、「ぐるうぷふみ」(川江一二三)、「FPOEM,FCVERSE」(大村浩一)、「中村宏二」(中村宏二)、「辻本佳史」(辻本佳史)、「ペエペエ工房」(廃人餓号)、「草原社」(武田健)、「あにまる・ラヴ」(立野雅代)

 これに「リリック・ジャングル」の足立和夫さんが追加参加されたので、16組。さらに私は、足立さんのブースにいて関富士子さんたちの同人誌「ZWAR」と、宣伝用の即席紙版「リタ」、セイロンベンケイソウの葉などを無料配布させてもらっていたので、かくれ出展者というふうになるだろうか(^^;。


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 今回の催しは、13:15〜交流・回遊・参加グループ紹介パフォーマンス、14:30〜45ゲスト・リーディング(石渡紀美)、14:50〜交流・回遊、16:00〜20ゲスト・リーディング(魚村晋太郎)、16:40閉会、というパンフレットのスケジュールにそって進行し、アクシデントもなく、めでたく終了した(と思う)。

 個人的感想をいうと、今回は交流・回遊の時間が多くとってあって、リーディングの時間とのバランスもよかったと思う。詩誌の閲覧用に配されたテーブルや椅子のスペースがゆったりしていたのも快適だった。私は交流・回遊の時間に、石渡紀美『ラヴ・マニフェスト』、島朝夫『あやつり』(夢人館)を買ったり、根本明さんから『この黄昏のあやかしに』(ミッドナイト・プレス)『hotel第二章no.4』(hotelの会)を頂いたり、煙草を喫いに休憩所に出かけたり(毎回ここでささやかな立ち話的雑談に興じてしまう)、海埜さんから頂いた缶チューハイ(レモン味とリンゴ味(^^;)を飲んだり、閲覧用テーブルで詩誌を斜め読みしたり、もちろんブースの前を回遊する人に詩誌を差し上げたり、隣席の足立和夫さんとよもやま話をしたり、というようなことをしていたのだが、そういうことはさておき。


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 以下に今回のゲスト・リーディングの様子を紹介しておこう。14:30〜45のゲスト・リーディングでは、最初、ヤリタミサコさんと、キャロル・マクスウェルさん(ギター)のうたと詩の共演があった。マクスウェルさんはストリート・ミュージシャンという。


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 続いてゲストの石渡紀美さんが数編の自作詩を朗読をされた。


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 石渡さんが、最後に読まれた「かあさん ON FIRE」という詩は、朗読の後に同じ作品をメロディにのせて手拍子で歌われたのが印象的だった。活字だと、元気で明るい曲のメロディと詩の内容の異質さがかもしだすブラックな味わいが伝えられないのだが、「かあさん ON FIRE」全編を引用してみよう。


ある朝
定年をまぢかにひかえた男の叫ぶ声
「かあさん、火事だ!」
台所から炎
燃えていたのはかあさんだった
かあさん ON FIRE.
炎の朝食を用意して
息子の弁当をこしらえて
それから頭から灯油をかぶり
マッチで自分に火をつけた
すべてをとどこおりなく行ってから
完璧な主婦を演じ終えた後で
ひとりの白い女に戻り
二度と妻や母親には戻らない川を越えて
内なる終わらないたたかいに 鮮やかな終止符を打った
真冬に咲いた花火のように
鮮やかな色で自分を染めあげた
”set oneself free"という
もっとも あざやかな たびだち

さよなら かあさん
さよなら おくさん
さよなら おまえ
さよなら キミコ
さよなら おばさん
さよなら 知らないわたし
たまたまわたしでなかっただけの 見知らぬわたし

「かあさん ON FIRE」(石渡紀美『ラヴ マニフェスト』所収)



 16:00〜20のゲスト・リーディングでは、やはり最初にヤリタさんとキャロル・マクスウェルさんの詩と歌の共演、続いて紀ノ川つかささんの、聴衆から特定の言葉(単語)をもらって、その言葉に関連する詩を即興で詠むという朗読パフォーマンスがあった。どなたかが出した「女の子」という言葉をいれて即興の朗読がはじまり、演台から降りて各ブースのほうを回って、いろんな人の言葉をひろっては、朗読詩の意味の連鎖のなかにとりこんでゆく。さいごは「女の子」のテーマに戻ってきて終わる。機転というか、そういう頭の回転やセンスのいりそうな芸能的パフォーマンスだ。


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 続いて、ゲストの魚村晋太郎さんが、詩を数編朗読された。


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 実は私は以前のポエケットの時に魚村さんから個人誌『愛と批評の形式http://www2.odn.ne.jp/uoshin2000年東京ポエケット臨時増刊号』というのを購入して持っている。そのときは、プロマイドのような写真が数枚ブースのテーブルのうえに並べられていて、詩誌を買うと、その中から気に入った写真を一枚貰える、ということだったので、実はその写真も持っている(^^;。魚村さんのきついメークのユニークな雰囲気が面白いので当時の記念に紹介しておこう(^^;。


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 魚村さんは京都在住で、「詩のボクシング全国大会」他、色々なリーディングイベントに参加されているとのことで(パンフレット記載情報による)、朗読も良くとおる声で落ち着いた感じでされていた。魚村さんが朗読された詩の中から「サマンサ」という散文詩の前半部をあげておく。


帰化したサマンサ。帰化したサマンサが秋刀魚焼くゴールデンタイム。サマンサの垂直な鼻を煙が立ちのぼる。いかしたサマンサ。帰化したんだから秋刀魚くらゐ焼いてもいいぢやないって、それはいいけど、サマンサ。動かない鼻。帰化したサマンサが秋刀魚を焼く、魔法を使はずに、帰化したサマンサが秋刀魚を焼く煙。暮れ滞む農人橋から槍屋町、糸屋町。釣鐘町に宙づりのサマンサの垂直な鼻。サマンサ。いかななる路地の煙にてむなしき空の雲となりけむ。平静に、平静に唱和する。サマンサ。かって弄れるカリスマの魔羅の雁首高(かりだか)はアメリカ。暮れかかる谷町六丁目。風の木の楓ギャラリーを出て上本町西二丁目。安堂寺町、龍造寺町。大阪の公園には公衆トイレがないな。サマンサ。大阪の公園には何故公衆トイレがないのだ。サマンサ。さらに法円坂から一二軒町。内久宝寺町の路地の奥の階段を上ると煙。人の気配だけする裏木戸。魚を焼く煙に誘はれて、狭い記憶の路地を辿る。

「サマンサ」前半部(「愛と批評の形式http://www2.odn.ne.jp/uoshin2000年東京ポエケット臨時増刊号」所収)



 今回は朗読をじっくりきいて感想など書こうと思っていたのだが、先に缶チューハイのほうがじっくりきいていて、言葉は右から左へ流れさるばかり。ただ言葉のリズムにのるようにうたうたと朗読の時間を楽しんだのだった。


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おまけ写真。当日配布した即席の紙版「リタ」です。


 打ち上げの会では隣席になった足立和夫さんをはじめ、根本明さん、阿瀧康さん、海埜今日子さん、立野雅代さん他いろんな方と楽しく歓談したのだが、川江一二三さんご夫婦から聞いたプレステ2のお勧めゲームの名前が思いだせないのが残念(^^;。

 




関連サイト

 「TOKYOポエケット」

 「コバトオンザラン」(石渡紀美さんのサイト)

 「紀ノ川つかさ」(紀ノ川つかささんのサイト)

 「パロールセンターホームページ」(魚村晋太郎さんのサイト)

 「アヴァンセ」(まつおかずひろさんのサイト)
 イベント・レポートのコーナーで、松岡宮さんの第5回 TOKYO ポエケットのレポートが読めます。






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