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水をさがして 4



立会川に降りてコンクリート溝づたい
金銀のモールのさがる暗い昼間のアーケードと
(こないだ見た夢の花火大会とおんなじだ)
小さなトンネルに身をこごめ
台湾人の医者が待つ病院へ行く
彼は上機嫌
ということは
彼の神も上機嫌
大井倉田町の侘守稲荷のところで
坤と鳴いてクラタさん
ワタシはいつでも此処にいますから
と請け合って
三つに分かれゆく路は
忌諱忌諱と冬鳥がやかましい
やかましい鳥でいっぱいのケヤキ並木を
大井町まで行ったらあとはチョコレート色した国電で帰るしかない
ツルミではキャバレエ「杯一」の酒で蛇行して
東口で白刃の
やくざの葬式の参列を観る
いやさ、また
京浜急行に飛び乗って、いっそ
カサノギ稲荷を過ぎ
横浜を瞬間に通過して
見よ金沢八景背戸神社
十六号線がぶち抜いた神域のベンテン島の
大窪詩佛のいしぶみを見上げるのだ
紅い蟹、銀の鱸で一杯やって
楼上
よいキモチになったのでうとうと
そういえば夜半にむらさめが来たようじゃけど
朝目覚めてみればあとかたも無し
――さてその後、
八景「あさひ屋」で飲んだことには
女版画家と、二十一世紀詩人と、
ぜんたい円い神主と貧寒詩人らが鳩首して
平潟や、暮れの八景
雪も無し
姐さん、熱いの二本だってば!


(ミッドナイトプレスSNS「なにぬねの?」にアップ)



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