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アカミトリ、にっぽん語の思い出と、赫々たる道楽文芸のために、
二〇〇七年三月
東京も野がタリーズ 二十三首
せっくすとひらがなで書けばどことなく無印良品っぽいね、せっくす
膨らし粉むしょうに買いたくなる五月くるくるくるぞ落ち着かないぞ
テロはテロ、チロもやっぱりチロでしかなくてペロペロ舐められている
ドトールで待ちあわせようといわれてもどーとるかそこは問題なのね
満員列車になにゆえに背を伸ばしつつ立ち続けてる霧島よう子
ムツゴロウの(お魚のほうの)映像を見ていながらのチョコレートパフェ
ふんぎゃあとなぜか言いたいふんぎゃあは人類創生のなぞの音だぞ
ああ六時ああ七時八時ふうせんを破裂させたい気分のままで
ぎこちないサービスのフランス料理屋でフォークとloveを同時に落とす
はらはらと近ごろしてない原せつ子東京(とうきょう)も(も)野(の)が(が)タリ(たり)ーズになって
「薔薇」と書くひとゆえ嫌う 愚かとは思うけど あたし、カタカナが好き?
平和とかエコにかかわる言葉や絵きらいですぐに捨てる 見もせず
くらしっく、くらっしっく、と言い遊ぶ たいていのものは聴きあきちゃって
むかしむかし美しすぎるCMを見ただけのことで愛するペキン
便利だというだけの服を着ていたね こころのきれいなあの頃のぼくら
会いたい人などいないと知っている会にカクテル二杯飲むために行く
銀座までふと出てしまうふとじゃなきゃ行かないと思う ぼくらの場合
殺伐としてましてねというけれど死体も廃墟もべつになかった
ごきぶりに近ごろ会わぬわたくしは大事なものを失ったのか
早稲田には稲も田んぼもなくてはや稲田三吉教授もいない
*むかし早稲田大学にフランス文学者・稲田三吉教授ありき。本当の話。
たましいという言葉好む人ら居てふいに食べたくなくなる餃子
喜怒哀楽など詠む愚か 流氷のニュースもゲルマニウムラジオで
なつくさの匂いむせくる思い出がときどきかすれ二〇〇七年
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