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Moonshine 4


ハケン切り 組合


 「ハケン切り」という言葉が飛びかっているが、違法な解雇を一流といわれる大企業が平然と行なっているのには驚かされる。この国ではあらゆる言語表現や価値観を疑ってかからねばならないのだということは、確かに今にはじまったことではないにしろ、法令もその精神も熟知しているはずの大企業があのような行為をするようでは、通念における一流なるものの観念の徹底した洗い直しをしなければならないのかと思わされる。
 契約期限以前の解雇は労働契約法第17条に違反しているのだから、雇用問題を法的に認識している企業なら平然と行えるはずはないし、仮に業績悪化などの企業側の理由で解雇しようとする場合にも、いわゆる整理解雇の四条件を満たさなければ実施はできない。整理解雇の四条件とは、人員削減の必要性、解雇回避努力、人選の合理性、労働者との十分な協議をいうが、これらを満たしていない場合、解雇は客観的に合理的な理由を欠いていると見なされ、労働契約法第16条によれば「社会通念上相当であると認められない」ものとして無効と判定される。現在横行している解雇においては、解雇回避努力はもちろん怠っていると見なされるべきであるし、労働者との十分な協議もむろん全くなされていない。解雇対象の人選の合理性は、あくまで労使協議の上で形成される「合理性」によるものである以上、これもまた満たされてはいない。
 にもかかわらず大量の解雇が行われるのは、労働者の多くが労働組合を結成したり、それに加盟したりしていないためなのだろうか。労働者が使用者と交渉する権利として憲法が認めているのは団体交渉権であるため、なにか問題が発生した場合、労働者個人の交渉要求に使用者側は耳を傾けない可能性が高い。が、労働者がひとたび憲法28条にもとづいて労働組合を結成して交渉要求をした場合、使用者側がこれを拒むことはできなくなる。拒めば、労働組合法第7条第2項に定める不当労働行為となるからである。
 法律にあまり関わらない人間は意外と知らないままで済ましているが、労働組合は、誰でも自由につくることができる。結成には第三者による承認は必要とされず、届け出もいらない。ふたり以上の組合員がいて、労働組合規約が作成されていればよい。規約に定めるべき内容は、労働組合法第5条第2項にある。規約さえ作れば、ひとり組合を作ることから始めることもできる。
 労働委員会による労使争議の調整などを経ても解決しないような場合、あくまで最終的な手段であるとはいえ、訴訟を考えざるをえない事態に至るケースも出てくるだろう。労働者側にとって、最初に50万円ほどを弁護士への相談料として支払うことから始める訴訟はもちろん負担の重いものだが、法人側の裁判費用はつねに個人の10倍以上となるのを考えれば、個人の裁判費用を貸したり援助したりする団体や方法があれば、多数の訴訟を同一法人にむけて起こす姿勢を示すことで重大な圧力をかけることが可能になろう。労働者を解雇するより、経営者側のボーナス廃止や賃金カットなどを行うほうが損害が少ないことに思い到らせるための組織づくりは、今後、もっと企画されていってもよいことだろうと思う。最初にある程度の基金さえできれば、次々と訴訟により基金を増やし、労働者権力を建前とする社会建設の再挑戦を始動する糸口に立てるかもしれない。

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