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ARCH 11

                   駿河昌樹詩葉・2000年9月



青 栗




若さをじゅうぶんに生きなかった と
ときどき つぶやくようにいうきみと 歩く

きみと歩くのを むしろ 選ぶ

終わろうとする夏の野道
栗も 柿も 青いまま
実を あんなにたくさん落として

おなじだね どこも
実りゆくものは 選ばれたものだけで
多くは 青いまま落ち

実りの色にかわりゆくけれども
それは枯れ色
ただ朽ちていく
それだけの色

若さも 働きざかりも
たぶん 老いも
ついに じゅうぶんには生きなかった と
やがて つぶやきさえもしなくなるきみと 歩く

きみと歩くのを むしろ 選ぶ

歴史はとおく はるかにぼくらを迂回して
それでも 人間とはなにかを
伝えうるつもりだろうか

夏の野道によどむ暑さ
落ちた青栗を踏みながら ぼくらはたどる

この時代をつくっている声に
参加していないきみと むしろ 歩く

あとかたもなく消えていくじぶん
そうと知って
その跡を わざとはかなく
うっすらとつけるだけのきみ

むしろ きみと歩く


実りゆくものは 選ばれたものだけで
多くは 青いまま落ち
実りの色にかわりゆくけれども

それは枯れ色
ただ朽ちていく
それだけの色

むしろ きみと歩く







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