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駿河昌樹詩葉・2001年6月
本条ゆりか、記憶だけ
本条ゆりか、記憶だけ。
ビル群は若く、記憶していない、ゆりか。暮れがた、
記憶らに持たれ、わずか異質な
見えない風景質にも包まれて、アカ、ミドリ、キ、ことに、ミドリ、の
信号のひかり、ひかり、を頼りに
数メートル、数十メートルの先見を拓いて 歩む
春の皺、秋の若やぎ、どこへ逝った?、あれら
発しうることばになお棲まれて
応えの失われの、永劫カモシレナサ、
風、風、そよぎ、星辰
ふる、ふる、
ビル群、救い、巨石群はきらめいて黙し
音にすべきでないことばことばことば。ガラス張りは
若草に近い体温を持って天へと昇る
みずみずしくあれ、天使たちの卵
孵化をいそいで
本条ゆりか、記憶だけ。
風の舟で行く告知の使者よ、
わたしは、明日、……
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