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ARCH 63

                   駿河昌樹詩葉・2002年4月



詩のかたちを借りて




詩のかたちを借りて
記す日本語、ここには窓と
その外、さらに、宙に浮かぶ大きな草花のかたまり、ここには窓と
わたしたちの未来。未来、ね、
未来は「明るい」という言葉との仲良しを強いられて
いつも孤独の半島を夢見ている。
詩のかたちを借りて
記す、人界からの脱出口への粗雑過ぎる見取り図
anywhere out of the world *と
響き止んだことのない声に、耳は
いつか、また、向くようになっていた。
こんな世界に…、
こんな世界に…、と
自ら抑制する気も力も失せた声たちが
桃の花々の香りを、たまたまのように羽織って ……あゝ、
そういえば忘れていた、昔の流行りのシャンソンに
歌われていたっけ、
詩人たちが消え失せてから、長いながい時が経って……**、と。
詩人
と呼ぶべき詩人たちが消え失せてから、(……?) と
替え歌しながら ぼくの春の声を
響き止んだことのないanywhere out of the world …とつぶやく声に
唱和させていく


* Charles Baudelaire : Le Spleen de Paris
** Charles Trenet : L'ame des poetes. "Longtemps, longtemps, longtemps, apres que les poetes ont disparus...."






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