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風景は救う



風景は救う
みどり濃いホテイアオイ
落ちたばかりのサザンカの花弁
アスファルトの端で土にまみれたビー玉

いま 誰かしら
わたくし
わたくしにとって

ああ 過去はみんな
新しいビルの
ツンとしたガラスをさんざんに濡らす雨の流れのように
るるるるとしているだけ
わたくしの内にあって
わたくしをこしらえているのかどうかなど
あやしい

風景は救う

わたくしはいなくてもいいのだと
けっきょくは思う
答えはとうに出ている

わたくしがいなくてもあり続けていくものに
OKといっておけば
たぶん いい

わたくしがいない視界が
風景

よく知っている仲
ずっとそれとともに生きてきた
ずっとそれだけは続いていく

風景は救う

目的語のなさへと
主語わたくしさえも消尽させつつ






「ぽ」172 2007年2月

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