[ NEXT ][ BACK ][ TOP ][ INDEX ]


ちょっとのあいだだけ人類になる そうして見る(あるいは思い出す?) 人類の夢 …みたいな




We’re playing those mind games together
Pushing the barriers planting seeds
Playing the mind guerilla
Chanting the Mantra
Peace on earth
                            John Lennon : MIND GAMES

ジョン・レノンのベストCDをひさしぶりに聴いていて
すごい
ちょっと驚いちゃった

英語を母国語とする人たちには
あの歌詞って
露骨に意味として聞こえているんだろうね
英語をそんなによく知らないで
外国語として聞いているぼくなんかには
メロディーの一部をなしている音として届く
英語として聞きとろうとしてみれば
ようやく意味も入り込んでくるけれど
あの意味がそのままダイレクトに心に飛び込んでくるとしたら
すごい

ビートルズが終わってからのジョンの歌って
たいていはとっても率直で
ひねくれずに
しらけずに
愛がどうだとか
平和がどうだとか
ピープルがどうだとか
歌っている
すごい(オノ・ヨーコの影響だとしても、
すごい…)

そんなものを
ストレートに歌うなんて
単純すぎ
バカでないの
ま、ポップスだからね…
――そう思う人は
詩っていうものをわかっていない気がする
詩の単純さって
複雑な泥土の海で
停滞と絶望と汚辱から生まれる最後の剣(ちょっと
むずかしめに言ッテシマイマシタ…)
ほんとうは
剣でもないんだけれど
剣だったらいいんだけどナァ、これ
って切りかざす(ふりを
してみる)
最後の虚構の影
必敗の見得(とか、
またまたむずかしめに言ッテシマッチャッタリして…)

そう
ジョンが言っている
mind gamesっていうやつの最たるものが
詩なんじゃないかって思う
個であるひとりの人が
ちょっとのあいだだけ人類になる
そうして見る(あるいは思い出す?)
人類の夢
…みたいな
(みたいな、
 と付け加えなければいけない感じがしてしまうところが、
 現代、
 ナンダナ…)

そうしたら
詩人というやつも
ジョンの言う
mind guerillaっていうわけかな

どんなことを
どんなふうに書けば
mind guerillaっていうことになるんだろう
いまの今
現代のこの瞬間に
ジョンのように歌ったとしても
mind guerillaじゃないように感じる
でもジョンのシンプルさと
あのやりくちは
ずいぶん大事だと感じる…

自分の国の言葉で
ポップスのシーンの中で
あんなふうに
愛だ 平和だ ピープルだ
だ だ だ
だ だ だ だ だ だ だ
と歌っているなんて
すごい

すごいよ

あれはすごいんだよ

年月を経るほど
時代が経っていくほどに
ジョンの歌は
預言者の言葉のように扱われていくと思うね
一〇〇〇年後に残っていく言葉は
ひねくれたり
しらけたり
あきらめちゃったりの
陰湿植物の言葉ではないと思う
ジョンの歌ったような
あんな言葉だろうな

彼がジョンという名だったのも偶然じゃない
ヨハネの英語名
いつも思ってるんだけど
洗礼者ヨハネはあちこち詠唱してまわる詩人みたいな人で
ジョンのようだったりしたか
ボブ・ディランみたいな風貌だったんじゃないかな
救世主の到来が近いと言ってまわった彼には
イエス・キリストというのは
ほんとうは

平和
ピープル
だったのかもしれない
だとしたら
まったく同じことをしたことになるね
ジョン・レノンは

思い出したからついでに書いておくと
ルイス・ブニュエルの映画『銀河』には
精悍、機敏、たくましく歩き続けるイエスが出てくる
ずんずんと早足で歩き続けながら
後から必死についてくる弟子たちに
「よくよくおまえたちに言っておく…」
なんていうふうに教えを撒き散らし続けていく
そんなイエスが
ある場面で突然出現してくるのは
まるでほんとうの奇跡
ほんとうにイエスに出くわしたかのようで
ブニュエルの映画の中でももっとも美しい場面だった
イエスもヨハネも
あんなふうだったんじゃないかな
クリシュナなんて
もっと軽やかだったっていうし
いつも笛を吹いたり
踊ったりして
遊んでいるようだったし





以下はおまけだけど
ジョンのLOVEっていう歌は
カタカナふうにして
つまり日本語ふうの発音にして「君が代」にはめると
けっこううまくいくんだ
国歌演奏の時には
ぼくはときどきLOVEの歌詞を思い出して
はめこみながら聴いている
こんなふうに――


きみ(ラヴ)が(イズ)よは(リアル)          Love is real
ちよに(リアル)やちよ(イズラー)に(ヴー)      Real is love
さ(ラヴ)ざれ(イズー)        Love is feeling
いし(フィー)の(リング)       Feeling is love
いわほ(ラーヴィズ)となり(ワーンティン)て(グ)       Love is wanting
こけ(トゥー)の(ビー)         To be
むす(ラーーヴー)まで(ーードー)        Loved


二番や三番の歌詞でも
音の長短を工夫すればうまくいく
三番はちょっと長いので
音をもっとつづめて入れる必要があるけどね
こんなふうに――


きみ(ラヴィズューー)が(ユー)よは(アンドミー)         Love is you     You and me
ちよに(ラヴィズノーイング)やちよ(ウィーキャン)に(ビー)     Love is knowing     We can be
さ(ラーヴ)ざれ(ィズフリー)         Love is free
いし(フリーイズ)の(ラヴ)         Free is love
いわほ(ラヴィズリヴィング)となり(リーヴィング)て(ラヴ)      Love is living     Living love
こけ(ラーヴィズ)の(ニーーーディング)       Love is needing
むす(トゥービーー)まで(ラーーヴドー)       To be loved





さて、最後に――

冒頭に題詩として引用したMIND GAMESの歌詞は
The Greatest JOHN LENNON Limited edition ○p&○c1998 TOCP-51056
Mtd.by Toshiba-EMI Limited. in Japan. STEREOのリーフレットからで
MIND GAMES のpublisher creditは
Lenono Music administered by BMG Music Publishing
それからコピーライトについての記述は
○p the copyright in this sound recording is owned by1973 EMI Records Ltd.
また
最後のおまけのところに引用したLOVEの歌詞は
同じく
The Greatest JOHN LENNON Limited edition ○p&○c1998 TOCP-51056
Mtd.by Toshiba-EMI Limited. in Japan. STEREOのリーフレットからで
LOVEのpublisher creditは
Lenono Music administered by BMG Music Publishing
それからコピーライトについての記述は
○p the copyright in this sound recording is owned by1970 EMI Records Ltd.

このLOVEの引用の中では
ここで使ったCDのリーフレットに印刷されている歌詞に
行換えや
小文字から大文字への変更(一番目の歌詞の最終行Lovedの冒頭)
特殊表記の施された一単語の通常表記への変更(三番目の歌詞二行目の
knowingは、リーフレットではknow-ow-ing)
などを施したのだけれど
レノンの原作を歪めてはいないと思うし
歪めようという意図もなく
たぶん
レノンの意思を十二分に生かした使い方ができているのではないかな
会ったことはないけれど
オノ・ヨーコさんも
賛同してくれるような感じになってると思うんだけどね

どう?






「ぽ」173 2007年3月

[ NEXT ][ BACK ][ TOP ][ INDEX ]