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なんだか とってもにぎやかな



いよいよ去っていく気になったの、夏よ?
さびしい感じの今日
ぼくもなんだか人生のおおかたを終わったような感じ
ちょっと味の落ちたグレープフルーツジュースの残りを飲んでいる
風が涼しくって
だれからも連絡が来ないのはしかたないとしても
へんな気持ち
またひとり
取り残されてしまったような気がする

行かなかったたくさんの場所
行くなら夏に、というあそこやここや
どれもみんな今日は遠ざかってしまって
場所というものがまるで昔のよう
すごく見たかった映画を見逃して時間が経ってしまったようで
なんでみんな遠ざかってしまうんだろう、こんなに
秋、…と しかたなく
つぶやいてしまいたくなるみたいに

蝉はまだそこここで鳴いていて
お祭りのあとの残りの花火みたいに ジイジイ
陽だってときどきは強くさすけれど
そのなかに もう
いない夏

生きているっていうのは
ぽっかり空いたこころのまま
こんなふうに とり残されること?
いつも?

思いはなんどかくり返されて
クルクル クルクル
蝉の声のほうへゆっくり消えていってしまう
行ったことのない
小さなあの森のあたり
なんだか とってもにぎやかな
蝉たちの歌声がある







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