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古泉さんの犬を見ているうち
あれを真四角にしちゃったらおもしろかろうと思った
成長しちゃった犬だから
真四角にするのは容易ではない
がともかくも大きなサイコロみたいにしちゃう
どの面にも白とあかるいブラウンのもよう
ちょうどいい長さの毛がほわほわして
高級ホテルのロビーにひょこっ
置いておくと
ときどきわんわんしたり
体重の重い人が座るときゃんきゃんしたりする
お腹がすくと自分で厨房に行ってごはんをもらったり
おしっこなんざそこらの大理石の柱にさ
足をやっぱり上げるんだろうかね
そうだなあ足はどうしようひっこめちゃうか出しとくか
まあ融通のきく便利なのにしたいところだなあ
ぼくら哺乳類はその点では失敗しちゃったからね
酔っ払って線路に落ちた古泉さんは両足切断になっちゃって
血が出すぎて死んでしまって今日のお葬式
古泉さんの犬はけっこう神妙にお座りしている
出たり入ったりと融通のきく足ってのは大事だなとにかく
古泉さんそのものをサイコロにしちゃっとくという手もあったが
後手にまわったというやつだなこりゃ
まあいい古泉さんのあの愛犬から始めるとするか
その前にどこかのぽわぽわした女の子をつかまえて
四角にしてみるっていうのもいいかもなあ
サイコロになってくださいと正式にお願いする
女の子は目を□■させて
よろこんじゃうだろうなあ
随喜の涙を流して
□■がたら〜っと下にのびて長方形になっちゃうかなあ
そうしたらまるで
いま見えているお葬式の幕みたいかもなあ
あの犬の毛のような
白とあかるいブラウンの四角のほうが
ま、楽しげだわなあ





「ぽ」239　2008年2月

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