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白紙があたしるから淫らな



白紙があたしるから淫らなことしないで車に乗るまで

しななかな楼上に

行く、決める、うなずく、もたつく、すぐ見返る、また戻る、歩もうとする、

歩まない、

(だれかに/だれにも見つからないように)ひっそり立って いっしょに

      雲、葉、(まだ行くネ、  )、 うん、

叙情ガ好キネ、オ好キネ、抒情詩があたしるから淫車に乗るまでしななかな

楼上に行く雲、うなずく葉、決める白紙、ひっそり叫ぶ(ちょっとずつ進む
                          ちょっとずつ進む
                          ちょっとずつ進む

叫びは近ごろプラスチック製から軟シリコン製が好まれるようになった街
街街街で客をとる、とっている皆 プラスチック製で古びたから

落ちている
落とされたまま
見たくない
見る
ゴーなどという
カモンとはいわない
落ちていろ
動詞を思う
動詞だけを思い出す
思い出そうとする
思い出しがたく思う
稲穂が見える
ない稲穂
ある稲穂
繁華街の稲穂
稲穂見びと
稲穂する
落ちていなほ
見たくないなほ
カモンとはいわないなほ
ただ韻を踏んでいなほ

行く決めるうなずくもたつくすぐ見返るまた戻る歩もうとする歩まない

くりかえす

行く決めるうなずくもたつくすぐ見返るまた戻る歩もうとする歩まない
行く決めるうなずくもたつくすぐ見返るまた戻る歩もうとする歩まない
行く決めるうなずくもたつくすぐ見返るまた戻る歩もうとする歩まない
行く決めるうなずくもたつくすぐ見返るまた戻る歩もうとする歩まない

くりかえす
それが叙情の技法
それだけで懐かしい
感情はそう動く
脳はそう動く
くりかえす

白紙があたしるから淫らなことしないで車に乗るまで

くりかえす
しょうこりもなく
叙情するから
脳だから、あなた
感情だから、あなた



雨がいつのまにか降ってきていて
わたくしは心の動きも特別に感じないのにそれを肌のおもてに覚えて
濡れもしないのに(大きな窓ガラスのこちらのこのカフェ…)
雨、……と
雨のなにかにおびえる微かなふるえが体を走るようで
降る音も聞こえてきているわけではないのに
いつのまにか降ってきていた雨がいつのまにか降ってきていて
降ってきていた雨はいつのまにか降っていて
雨などという呼び名がいっしょに降ってきているわけでもなく
わけもなく
雨、……と思ってしまうわたくしの限界の上を
限界のはずれをくっきりと
降る雨の
ほんとうには降ってこないところにいるわたくしなのに
雨、……と思って
わたくし、
なにしているのかしら、
わたくし、
と読点を打ったりしてなにか表わそうとしているのか、いないのか(あ、
また、打った、…)
わたくし、という限界、はずれ、

  (白紙があたしるから淫らなことしないで車に乗るまで

  (行く決めるうなずくもたつくすぐ見返るまた戻る歩もうとする歩まない




         いつのまにか雨が降ってきていて
肌の動きも特別に感じないわたくしなのに心のおもてにそれを覚えて
濡れもしない大きな窓ガラスを囲むカフェ…
体、……と
体のなにかにおびえる微かなふるえが心を走るようで
古音も聞こえてきているわけなのに
いつのまにか古びてきていた肌がいつのまにか降ってきていて
降ってきていた体はいつのまにか振っていて
夢などという言葉がいっしょに降ってきているわけでもなく
わけモナく
雨、……と思ってしまうわたくしの限界の上を
限界のはずれをくっきりと
降る雨の
ほんとうには降ってこないところにいるわたくしなのに
雨、……と思って
わたくし、
なにしているのかしら、
わたくし、
と読点を打ったりしてなにか表わそうとしているのか、いないのか(あ、
また、打った、…)
わたくし、という限界、はずれ、





「ぽ」289 2008年6月

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