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田園歓談
批評と違って詩を書く時っていうのは
人の悪さを隠さないといけないから大変なのだよ
と言ったら
なぁに、そのまま人の悪さを出したっておもろい詩になるよ
と返してよこした詩を書かないおじさんがいた
ちなみにこのおじさん、詩を読みもしない
いやいやああ見えても批評だって
人の悪さを装わないといけないからけっこう大変なのだよ
と誰が見ても人の悪い評論家が言うから
装っているうちにぴったり張り付いちゃう役柄っていうのもあるもんかねぇ
と売れない小説家が言ったのでみんなでしげしげ顔を見ちゃったのだが
この時みんながどんなことを思ったのか
いちいち詮索はしないでおくことにするよ
危ないからね
つくづく売れない作家だなあとみんなが思っているんだから
たいてい頭の中でもそんなことを考えたにきまっているんだが
売れないねえ、この人
なんて思った
なんて書いちゃったら
それは危ない
そういうのは
危ないと認識しなければならないのだ
愛
だなんて
こういうのを呼ぶ人もいる
批評家も
おじさんも
小説家も
それ以外の人たちも
愛
だけは持ちあわせていた
というわけで
美談じゃないの
今どき
遠くないところで
鳥が鳴いている
遠くでは
山が少し霞んでいる
足もとでは
せせらぎの音が
絶えない
こんな風景を付け加えたく
なっちゃうじゃないの
ないんだけどね
こんな風景
ことばって
便利なもんです
「ぽ」291 2008年6月
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