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西鶴センセ



ひさしぶりに行って見たロードショー
けっこう心を動かされちゃって
けれど 軽く食事とったら
感動 もう消えている

繁華街の路上じゃ
流行のファッションちゃらちゃらモサモサの若者が
オヤジみたいに唾を吐いてる
オヤジはオヤジ
老いてても若くっても
女オヤジだっている
年齢性別関係ナシ
路上に唾を吐くヤツだけがオヤジ
お前のことサ
お前らのことダゼ

気まぐれに読み出した長めの小説
終わって二週間すれば
あらすじさえはっきりしないのはどうして?
読むのに睡眠も削って
仕事さえちょっと手を抜いたってのに

舞踏ももう見に行かないナ
どれもこれもほとんど同じだしィ
体ひきつらせたり
のたくったり
急にとっぴな動作したり
インスタントお化け屋敷には
もう飽き飽き

世界情勢も もういい
紛争か戦争か不況かセレブネタか
他人の儲け話ばっか
むかしのおばあちゃんたちのように
こわいねえ とか
戦争はヤダヤダ とか
あんな非道いことするとバチがあたるよ とか
あるところにはあるねえ お金 とか
それだけ呟いておけば けっきょくは済んじゃう
気のきいたことを言おうとすりゃ危ない
アサヒシンブンになるか
ショクンやサピオになっちゃう
情報通やアナリストを気取ってもしょうがネエだろ
それで儲かる仕事についてネェんだから
憂国しても国はこっちを憂いてくれないし
マスコミに出る程度の
スポンサー付きボウフラ情報で
人生いいほうに変わるわけじゃないし

能も歌舞伎も文楽も
もういい
貧相な日本のミュージカルも最初からいらネ〜
演劇もコンサートも
気取った裕福層ばかりでさみしくなる(連中が得ている金?
もと官僚の天下り父ちゃんからのお小遣いか
割の良過ぎる儲けの業界パパからか
授業数二つで年収一〇〇〇万以上の楽々大学教授か
代々の遺産を資金にさらにシホンシュギを継続してるボンボンか…)

文芸雑誌は子供の文集
描かれるバイオレンスもセックスも
それとぜんぜん縁のない人間によって描かれているだけ
魅力も力も無軌道さもない連中
他人の妄想につき合うのは
もういい
はたまたニチジョウの
他愛もないキドアイラク
事件のなさを売りにするってのも
あそこまでつまらなくなりゃ
盗人猛々しいって感じ?

ひとづきあいも
もういい
小泉政権下のこのニッポンじゃ
他人になにかを期待するパラサイト連中ばっかり
価値や意義や楽しみや
そんなものをひとづきあいから得ようとして
街には亡者がうじゃうじゃ
だれもが自分を褒めてもらいたがっていて
自分を発見してもらいたがっていて
ついでに
インスタントな楽園とさとりを求めて
ムダ金とムダ時間を使う
金ズルを見つけられれば勝ち
見つけられなきゃ
シッソな中年後期と老年全期が約束されておりますそうな
仏道修行者とでも思えば
年金破綻も超えられるかもね〜
きっと修行省がつくられるヨ
修行と受苦好きの国民性なんだから
欲望離脱の最終ステージだと喧伝すれば
格差も財政破綻も増税も
いけるネ

詩歌だけが矛先を逃れると思っちゃいけない
魅力的な詩人はむかしから払底している
ウェルギリウスだって
青ざめた貧弱な追従家だったそうじゃないか
ダンテのジジイ顔がいいとは思えないしね
詩人という言葉の意味は
冒険
潔さ
思い切りのよさ

シャレすぎて理解を超える言語表現…
今じゃあ
これほど見つけづらいものもない

てなわけで



の世の中に ってこと
西鶴センセ
お弟子にしてぇ
金ナシ
ツテナシ
未来ナシ
それじゃあお弟子も勤まらぬ?
そこをなんとか、なんとか、

(ト 漆黒の闇の中、なにかにすがる風情。手を合わせ擦り、祈る姿のまゝ、力なく立ち尽くし、幕)

ぶんげいの沙汰も金次第、ぶんげいの沙汰もかねし〜だ〜い

(場内しだいに明るく、後、シャギリ)





「ぽ」93 2006年4月

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