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ぺらぺらもあわ雪



心はうすっぺら

 ぺらぺら

音ともいえない
そんな 音のなか

   ぺらぺら

人類の心のうすっぺらさを

   ぺらぺら

私の心はうすっぺらく抱えて

 ぺらぺら

さあ、旅だ、

 ぺらぺら

  マストもなしに

 ぺらぺら

  マストもなしに…

つぶやいてみても
パソコンの画面とキーボードを前にして

 ぺらぺら

どこへも出かけようとなど
していないじゃない?

出かけたところで

 ぺらぺら

あれもこれもわかりきっていて

 ぺらぺら

切符は切符売り場で買わねばならないし
弁当を買えば消費税もとられ
列車のとなりの乗客は裸のグラビアを見ていて

 ぺらぺら

前の列の三人以上は携帯でメールかゲームをしている
安い喫茶店は煙草の煙でもうもうとなり

 ぺらぺら

レジ係はこちらの目も見ずに礼をいう

わかりきっていないところへ
どのように出かけよう

 ぺらぺら

マストもなしに
マストもなしに
わかりきった意味!意味!意味!の森を抜けて

 ぺらぺら

強要されたあれこれのかたちを脱ぎ捨て

 ぺらぺら

ほんの一瞬でも

 ぺらぺら

だれも吸ったことのない冷気を肺腑に入れるために

         どのように
         どのように
         どのように

 ぺらぺら

 ぺらぺら

心は
うすっぺら

心、 うすっぺら

出かけようともしていない


薄みも 厚みも
ない
ことば、こんなふうに書きつけている

書きつける文字は
あわ雪

いつも
わふわふ 降っている

あわ雪、

文字

ぺらぺら も

あわ雪





「ぽ」99 2006年4月

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