[ NEXT ][ BACK ][ TOP ][ INDEX ]


国際少女小説!



ああ、

    あれは 国際少女小説!



        国際少女小説を
        国際少女が読んでいる

                             国内少女よ、きみは
        国際少女が
        国際少女小説を読んでいるのを
                           見ている

          木の下
            木の下
              木の下   がらり
                木の下

        望みのままに流れていく 苦労の苦の字も知らない人生を
        生きよ
        国際無苦労少女
        おまえが不幸で世界はどうする!
        おまえがみじめで世界はどうする!
        ひとり無苦労
        完全幸福してゆけ



と つぶやく国内少女
                          (かわいそうに
             この子はしっかり自他の差別を心にみごもっている)

                 幸福者と不幸者が世にはおります
           行け、行け、幸福者
    停滞せよ、する他ないんだから、ネ、不幸者

              ひとはふっと不幸のエアポケットに嵌まることがある
                               嵌まったら
                          数年は出られない
                          数十年におよぶこともある
               まったく土星の運行どころか 冥王星の運行デアル



と 独語する国内少女
                  木の下
              木の下
                    木の下 がらり
                木の下で

        国際少女小説を読み続ける
        国際少女は  読み耽る
               読み耽る
                 耽る

   おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

                 耽っておるナ



と 国内少女
              きみは耽れない
                   いけない
            よ それ いけない

                       のか?
                  と
                  言った
                  あとで
                 ?
                 ?
                 ?
            まったく ?
                  と 思っちゃうなア



                                               国内少女が
        国際少女を見ている
                           国内少女は
        国際少女を見て育つ


           淫靡だ


        国際少女小説を禁書せよ
               焚書せよ
               しかし
              禁書少女や
              焚書少女が出現しないように程度をわきまえて
               適度に
               禁書せよ
               焚書せよ
               と言っておるのだ
               むろん
              程度わきまえ少女や
              適度少女の
               発生も阻止せねばならぬ
               むろん (またか…)
              阻止少女だって
               いけないのだ
               ましてや
        国際禁書少女や
        国際焚書少女は
               さらに困るし
        国際程度わきまえ少女だの
        国際適度少女だの
        国際阻止少女だのも
               困るから
                           国内少女は
                            ただ単に
        国際少女を
                        見ているだけでは
                              ダメ
                              ダメ
                             ダ〜メ




        木の下には風が
              少年風
     透明少年風
        つるつる
           するする
                 の肌で
             透けた裸で
        国際少女小説のページを

               はふぃ
           はふぃ

                と 翻そうとするけれど
                       それを
               そっと押さえる
        国際少女指
              中指と
            薬指

                 はふぃ

はふぃ

     透明少年風は
          裸のからだのどこで
   ページを翻そうとしたのかしら



と 国内少女は
                   もう十年も二十年も経ってから
               ある夜つめたい布団の温まるまでの時間の間に
                                ふと思った


                 アタタマル  (と カタカナ書きしたり)
                 あたた●   (とか)
                 アタタ●   (とか 表記してみたくなった)
「アタタ●」  (となるとなんだかわからんが 非常にキマッタ商標のようにも感じ それだけでなく 帝国海軍の新戦闘機の名称にもいいように思える でも、だめかな、やっぱり 手で揉んで温かくなるチッコイ使い捨てカイロぐらいにしか使えんやろか)


               …「ふと思った」のあたりから また始める…



                                                                         で ふと思った わけだ



                         しかし
                   モウナニモ言イタイコトハナイ もう
          十年も二十年も経ってしまって
                      経ってしまったある夜の
              つめたい布団の温まるまでの時間の間に ふと
                    思ったりしてしまう
                           旧国内少女
                     なのですもの
                    いまでは


                    いまでは


                                                                    国際少女小説が
              あの日
       木の下 うららのお外で読まれていた

                    いまでは

        国際少女小説が
           あの日のひかりの中に浮いて
      読まれているの


                     いまでは


   読んでいた国際少女もいない
        国際少女を見ていた           国内少女もいない



        国際少女小説だけがあって
      読まれている

            木の下
         木の下
               木の下

                    いまでは


      読まれている



                 だけ





「ぽ」104 2006年4月

[ NEXT ][ BACK ][ TOP ][ INDEX ]