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末わかれ



          膨らし粉までの高等教育ゆえに
         るるると鳴る鳴る郊外電車終電車輪
             頭蓋骨までも貝殻
       輝きはいつも昔ばかりというわけではなくて
        オレンジのぬいぐるみの熊らにも輝く埃
         水の流れさえあれば幸せだった頃の
              まどんなさん
       貧相なキセルをコンコンと火鉢に打ち当てて
           ☆ 街灯点滅人跡未踏 ☆
        ステキなお酒を注いでもらってそのまま
            海へ身を沈めていった
              まどんなさん
           飲んだのかしら、あのお酒
              それとも海を
           飲んだのかしら、あのお酒
          意味もわからず逝く人、いる人
       輝きはいつも昔ばかりというわけではなくて
       それも人生だったということにしておいたり
      それもいい人生だったということにしておいたり
          るるると電車が来たので乗って
         人 人 人 人 人 人 人 人 人
            よく見れば この漢字
          上から下へ別れていくばかりの
              末広がりならぬ
               末わかれの
                しるし





「ぽ」108 2006年5月

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