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空気　肌　すやすや



空気　肌　すやすや

さがしているのは（さがしているのか？…）
なに？
電車に乗って　空気　肌　すやすや
少年後期よ
少女後期よ
さがしているのは（さがしているのは？…）
たぶん
なにかのさいご？（さいご？…）
さがさなくても
ちゃんと来るのに

空気　肌　すやすや

ここはどこかの海ちかくです
　（名前なんかは大事ではない）

海沿いに電車がいます

その中に少年後期と少女後期が
手を握りあって乗っています
ふたりは見つめあっていなくて
足元よりちょっと先の電車の床を見ているかっこうで
うとうとしている
すやすやしている

空気　肌　すやすや

ふたりはどこかにいかなければならない
ずっといていい場所なんて
この世にはないから
今いる場所ではない場所へ
移り続けるために
生きている
人間と呼ばれるたくさんの体たち
のうちのふたり
の少年後期
と少女後期

さがしているのは（さがしているのは？…）
さいごの場所？
いつまでもいていい場所？
もちろんお墓なんかではない
いつまでもいていいお墓なんてないから

電車はすてき
と少女後期はさっき思った
乗っているあいだは動かなくていい
もう動かなくていい場所
しばらくは
しばらくでも
ながいしばらく
しばらくには終わりが来るけど
終わりが来るまでのしばらく
来ないうちは
永遠
ちょっとだけど
永遠

どこかの海ちかくの電車のなかで
手を握って
うとうと
手を握って
すやすや
しゃべらないでいる少年後期
と少女後期
本当の終わりはここかもね
終わりがさいごにあるとは限らない
本当の終わりはここかも
生まれてきたきみらの頂点は
たぶん　ここ

海沿いの電車のなかです

空気　肌　すやすや

離さないでもらいたい
握った手
きみたちのさいごの姿であってもらいたい
ずっとふたりでいる
きみたち

空気　肌　すやすや

　（名前なんかは大事ではない）

　（だれであるかなんて大事ではない）





「ぽ」107　2006年5月

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