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言流華(イイナガシノハナ、とも)



どんどん淋しさが募っていった後は
ぽかっと口をあけて
疎林のむこうに目を放ったままのさいはて老人
となるのだ
みんなが総出で心がけているのは
淋しさを逃げて逃げて逃げ続けること
淋しさと書いたが
寂しさのほうがいいだろうか
寞しさとでも書こうか
錆しさかな
寥しさ?
錆市裟?
錆士狭?
さ・び・し・さよりももっといい言葉があるのか
あるだろうな
あるかな
む・ご・さ
とでもいうべきものか
生のむごさ
どこもかしこも
むごさ
たしかにむごい
生まれて生きて死ぬだけで
どんな利口者も馬鹿でしかない
生死について訳知り顔に講釈するものの死に際をよくよく見よ
連中の脱糞や口臭や舌にこびりつく苔の臭いを嗅げ
小利口な本を書いて懐に入る小金にニンマリとするアホ面を見よ
どんな利口者も馬鹿でしかない
老病死だけは平等で内面に被ったままでいられる仮面などない
自殺者だけが本当は超えるのではないかと思う
自殺もしていない者ががたがた知った風なことは言わないものだよ
とにかく生きねばならぬとは壮絶に飛躍したご託宣
汝死ヲ知ラズシテ、如何ニシテ生ヲ知ランヤ(聖駿河昌樹)
よくよくあなた方に言っておく
私、駿河昌樹につかまっていなさい。そうすれば
あなた方は永遠の死に繋がる
私こそはあらゆる限定なしの無限の死の権化
見よ、今、私は来た
人類のあらゆる愚行を愚行と呼ぶだけのために
お前らはただの自己顕示馬鹿で人類はくだらない、人間はどうしようもなく、
せいぜい死ぬまで生きてるかのように感じてるがいいさ、と言うために
言葉はくだらない
くだらないと知って使え
そうじゃないと言葉に使われる
とも言うために
じゃない
じゃない
じゃない
そんなことは各論に過ぎないのである
大事なのはウンコだ
お前はデカルトウンコ、してねえだろ
ウンコというのはべつに偉大でもない
unko
unnko
unco
どう書いたらいいか、迷っちゃうじゃないのヨ
おお、ローマ字よ
啄木や土岐善麿が好きだったようだが
私はそれほどでもなかったよ
小学4年生の頃だったか
お前との初めての出会いの時に
私が好きだったのはクラスの小林さんという女の子だったのだ
埼玉の田舎の小学校だったのに彼女と来たら時々ベレー帽など被ってきて
バッカジャナカロカ
と思ったけれどもペコちゃんをちょっとひょっとこっぽくしたよーな
かわゆさで
私はある日親友Aの自転車の荷台に乗せてもらいながら告白した
小林さんとなら結婚してもキスしてもいい
おお、ローマ字よ
私がお前に初めて出会いながらお前に恋に落ちなかった4年生の頃
私の愛慾の表現ときたらその程度
かわゆい、かわゆい愛慾
小林さんとなら結婚してもキスしてもいい
そうして
おお、ローマ字よ
私がお前に初めて出会いながらお前に恋に落ちなかった4年生の頃
まだ私はキスだけで子どもが生まれるんだと信じ込んでいたのだ
コウノトリとかいう
見たこともない(日本のどこで普通に見えるってんだ?)鳥が
赤ちゃんを運んで飛んでくるとかいう説も聞いていたので
おお、ローマ字よ
私はよく空を見上げてはコウノトリを探した
コウノトリは見つからなかったが
それじゃあキスで赤ちゃんが生まれるっていう考えとちょっと矛盾しないかと
悩みはしたものの
おお、ローマ字よ
世間はそんなものだとはすでによーくわかっていたものだから
悩みはしたものの悩まなかったんだよ〜〜〜〜〜ん
子どもの思考はけっこう合理的なのである
で小林さんよ
あなたのオシリをついに私は見ることはなかった
あんなにもいっぱいの女の子のオシリをすでに見ていたというのに
である
それが愛の証明といえば言えた
私はスカートめくりを愛した。
私はパンティおろしも愛したのである。
小学校の時からそうとう性的だったね。
異常者かと思ったこともあるが(母は変態性という言葉を好んで、
学校の通学路にヘンタイセイが出たら困るわね、
近所にヘンタイセイがいたら困るわね、
とかとかよく言っていたが
考えてみればヘンタイセイなるものは小学男児の無二の友
中学男児の心の友)
それでいいのだ
よかったのだ
だって
オヤジのチンボコをママのマンコにぶっこんだ挙句の産物が私だったのだから
存在そのものがヘンタイセイだったのである
人類創生のヘンタイセイを我らは一身に再現しつつ発生し
マリリンのおっぱいにポヨヨンとされちゃう
マリリンが出ちゃうところが古いカナ
でも考えたんだけどね
マリリンっていうのはやっぱりなにかすごくテンケイテキだ
プロミスの子のおっぱいじゃ足りないし
若尾文子の裸の腰の輝きでもやっぱりセカイテキじゃない感じ
で、ローマ字よ、ついでに小林さんよ
オシリであり
スカートめくりであり
パンティおろしなのであり
ヘンタイセイではないのである
私はたんにラララ精子の子であって
おとっちゃんガンバッタ
おっかちゃんガンバッタ





「ぽ」122 2006年8月

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