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うつくしい大きな日暮れが来る



わたくしの味方をするつもりなど　ない

わたくしの領土など
お望みなら　いくらもくれてやる

ありえた領土
ありえたかもしれない領土
なら

ひとは金をもうけ
土地や家や人や
さらに人や人や人や
あれやこれや
それや
ふんだんに手に入れて
そうして
どこへ向かうのか

わたくしは止まり続ける

軽侮する声を背に
ときどき　果てしのない荒野のほとりの
かわいたバーに入る
カクテルなど作れないおやじが
ウィスキーを
どぼどぼと　こればかりは太っ腹に
注いでくれて
かわいた小説の文句のように言う
今夜も暑い　と
響かぬ声で
ぶっきらぼうに

おまえはなにをしてきたのか……
などとは聞かない
おやじに
乾杯

自慢話なしの
うつくしい大きな日暮れが
来る





「ぽ」124　2006年8月

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