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花刻



出会ったことがとだえてゆく。行く先々で嘘がつげられ、きしんだ風にまとわりつく。泡のような出立が、かれらのねじ、つい落としてしまうのだった。気づかない、触れえたことが行方をとまどう。あらたな会話がことよせていた。ゆたかなものをぬぐうようにして、泥土になじむしじまをまたいだ。根元だったか、浮かびつつある、くるしい香りが発芽をついばむ。
ちらばった、あざやかな。衣服のまにまに金属片、かいでしまう、かれらに気配はささやくだろう。たぶん、いつも床下にはあぶらのすじ、唐突さをぬりこめつつ、ゆがんだ流れをもちはこんでいた。にじの色、とかぶりをふり、追いつくはずのきれぎれが、息のかたえで泡立った。毛羽の蒸すような聞き耳のなか、すいつく肌のかれらがいる。
抱きしめることでのがれてゆく。こすれるねじがおきやられ、根茎の音によこたわっていた。うつむくような切っ先が、ふぞろいなかれらを引きつける。ぎこちなさがこぼれていた。ふさがれては土のまぶた、あなたの背筋はかたむくことで色をたずねる。風の余韻に窓をみひらく。茎の消息はままならない。
おしだまることでよりそって。ちかしさのはてが声をうらぎる。そうではなかったかもしれない。つむられた消息にはためく亀裂。花の刻、つらなっては、ゆたかなまぜものをつたえてくる。腐りゆくはしばしで、あぶらはにじをしたっていたのだ。かわしたことばがおもいだせない。たたくとびらを邪魔にする。
はなれたことが満ちている。窓わくのかたちにかれらはつむり、咲いている、色の朽ちかたをよこぎろうとするのだった。くびれた肌が衣服をつどう。あなたの根の刻がひたされていた。なかばあらがい、指のしめった空をあおぐ、わたしたちはここにいない。とおりすぎる無言には、いつでも肌がきしむのだ。出会ったことがとだえてゆく。花はかたよることがない。




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