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藪知らず、八幡の。



は、そばにいったのだろう。たぶん、ぜったい。わたしは感想を追
うのだった。願望がとまどいにひきつけられ、肌をついばむ夜明け
がある、そのことを。問いが地面にひびをいれ、根のあたりでまど
ろんんでいる、ざわついている、とかきあつめては、朽ちてゆくの
をふせごうとするので、ぼくはそこにいないのだよ。くちびる付近
ではがれてゆく、発芽のような長さがある。
無数の茎、とにごってゆく、その先から、ねだるような声、また声
に、終わりたがった息切れのつづく。彼女の印象がつみかさねられ
るので、わたしはきっと埋もれたくなる。くろずんだ、掟のような
まどろっこしさが手まねきを、だからきっとくるまって。ここにい
ない男だった、出口だったか入り口をさがしているので、はなから
とおりぬけた女がいた。さわさわと誤謬のような風がくずれ、なん
だかとても肌にくいこむ。
は、声色のような距離だった。手にとるばかりのすれすれに、だま
されたがるわたしがある。答えを捨てさり、ひろいあつめ、病んだ
しらじらしさをあびながら、勝手に息づくつぼみだった。けっして
みたくない花びらをひらいている、そう、ぼくは釘づけに、しぼむ
までを過大評価し、きしみをずいぶんとりよせるのだ。袖のあたり
をかすめては、おくれてとどく開花がある。わたしは他人を自乗す
る。あしたがきっとなつかしくなる。
片側に。ふれながらたどればいい、とわらう男が藪につかれる、つ
いていた。かたえのような誤差だった、かきわけることで棒にふる、
女はかぎりなく平行に、葉うらのようなことばをのむこむ。わたし
はここにいるのだから、わたしは脱出をかぞえるのだから。掘りお
こせば、もうすこしで時刻がかさなる。手折ったかたちになびいて
いた、去年の茎にながれる蜜。


【八幡の藪知らず】(やわたのやぶしらず)h千葉県市川市八幡の呪詛伝説を伝え る藪。この藪に入れば再び出ることができないとか、祟りがあるとか伝えられる。 i《転じて》一度入り込むと迷って出られないこと。(日本語大辞典/講談社より)







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