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ひぐらし



こだまのむこうでかたえがたずねる
そとはここではありませんね
だまっていればわたしもかくれる
おとずれが蝉のようで
にぎわって
雑踏
かれのこちらは間隙ですか

くらいひ
すけて
どんどんわたしをいないので
きっとたまにはくりだすのだと
あちらですから
こちらでは
あせってはがれる視線ですから
断章
ひきさくようなあれは
つんざき

こだまをまとめてあんでみます
そこははねかえる意識ですか
そむけた顔がやわらいで
てりかえしのように
おとをたぐる
断片
こちらの反射にこもっては
つたえないものでいっぱいだから

他者たち
しずけさをおきざりにして
さいはてのよう
おいでおいで
そとはだれをいきますか
しゃべりかければわたしもかえす
こちらだったかのしげみから
つたわるさけびをかなぐりすてて
断絶
さびたすきまをぬってゆく

ひをくらし
たまりますよ
ずいぶんあちらをまたぐので
とばないことをやぶくようです
ちかしさをたばね
こちらもひびく
雑踏
ここではだれもがすどおりを似る

かなかなと
ことだまめいてふりました
しぐれになずむてざわりです
そそいだ予感にはちきれる
たえないものでこごえるならば
断続
やましさもきっとあたたかい

かなでるけしきを
みたいとさしだす
わたしをからめとって
もたげるはね
ふるえる地中があいずだと
こわばって
雑踏
さいごにきっとであいましょう

ひぐらし
はてのはてまでさびたので
ぬけがらたち反響し
こわれた土をかえしてくる
こちらですね
かなぐりすてて
いつかをそこいらに
断簡です
ころがったのではじまろう
あちらのはんたいをしりたいですか  



初出: 『洪水』2号

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