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花縁



えにし はぐくんで
突端は きょうかんのようにまたれていた
さきざきで ひらいた口にすいこまれ
わたしたちをなぞときとして
いなくなる きえはしない
じゅうまんする地層から
ねむりにしたしいさそいのようです
ゆめをきさいするにはおそれもうまれる
すいこむと ふいになるから
おきつつあることをあやしてみた
とおぼえのような花もさく

いちごいちえをもち帰るため
先端では まだかまだかとあなをほる
地下街はそのようにねじれ
わたしたち くぎづけのまま はなち
いわば かれらとして
ふるまいのきれつをむさぼるのだった
かさなったなら くずれない
しんらいのようにみち
あふれるつぼみをおりたのか
用心 用心 どこゆく
なぞをかたどるものをすりぬけ
きょうふのまぢかでかすめればよかった

えにしのちぎれ
端緒いぜんにくみこまれ
かれらの原初をてらしている
ぱっくりあいた 口のかげはもうとじない
ようぶんすんぜんのものがたりにて
根っこたち わたしをのびて
すいこむよすがになぞときをむすぶ
地表はそのようにかれるにまかせ
ますますかわす いきたかった
もう ほるようにして こすれてしまおう
あつまる感触がつめたかった 発熱する
かれのだれもがゆくえをしらない

いちごいちえに迷子になった
端的なまでに生成 あやぶんで
あたらしいほどむせますから
ますます口 ではいりをじゅうまんさせ
ますますわたしをねむりたくなる
くつうにゆがんだ 根もとならばつらぬくか
かさねた花は ずれますね
きょうゆうする表情もまたありますよ
なぞときのまえに うしろに
ぼうだいな地面
そびえるあいだのめざめだった

えにし かきわけ
たばねたかった
発端の たんねんにほりおこされ
帰路をきっとほのぐらい
地下道たち ささやき さざめき
口いっぱいの花びらに
くちてゆくことをひもときたかった
ました粘性のぬくもって
あな うめつくし わたしたち
ゆめのこうかんをみちてゆく
茎のすんぜんをむせびなく
ちりゆく満開にかれをひびいた

いちごいちえの迷子さん
帰りじたくになぞときをする
あさいねむりをかれていた
それがすべてではなかったが
ふはいをうけもつ 地誌もまた
れんめんとだんぜつのきょりをはかり
すいこんで ああ みつかった
ふるいきょうめいにみちていたから
おりたさきがゆめなのではない
ゆめのさきがのぼるのだ
根のないむつうをさしだされ
たむけたこたえにそでふれあう
終端をいない めぶいていた
ふるえる花のとおのくこえです



(初出『ユリイカ』2008年5月号)

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